パリ五輪で初採用された「ブレイキン」。女子の湯浅亜実(ゆあさ・あみ、ダンサー名・AMI)が金メダルに輝くなど日本勢が躍進し、日本のダンス界は大きな盛り上がりを見せている。パリの観衆を沸かせた代表選手たちが新たな活躍の場に選んだのが、世界初のプロダンスリーグ「Dリーグ」だ。(酒井翔平)

パフォーマンスを披露する半井重幸

◆ボルテージマックス!チーム戦

 五輪のブレイキンとは異なり、Dリーグはチーム戦。13日夜に東京ガーデンシアター(東京都江東区)で行われた今季開幕戦のオープニングセレモニーで、今季から参戦したオリンピアン3人が登場した。湯浅、男子のエース半井重幸(なからい・しげゆき、SHIGEKIX)、豪快なパワームーブで存在感を示した大能寛飛(おおの・ひろと、HIRO10)の姿に、会場のボルテージは一段と増した。  各チーム8人が一斉に踊る試合は、半井と大能が圧巻のダンスで観客を魅了した。最大の見せ場は、チームの代表がソロで踊る「エースパフォーマンス」。半井が動きの中で体をピタリと止める代名詞のフリーズで貫禄を示すと、大能は得意のパワームーブで観客の度肝を抜き、いずれもチームを勝利に導いた。半井は最もチームの勝利に貢献したダンサーに贈られる「MVD」も獲得。初陣で最高の結果を収め「自分の持ち味を前面に出せた」と笑顔を見せた。

開幕戦を勝利で飾り、チームメートと喜ぶを爆発させる大能寛飛(右から2人目)

◆ダンスやブレイキンの魅力を伝えたい

 Dリーグはコロナ禍真っただ中の2021年に開幕。1年目は無観客開催を余儀なくされ、動画配信のみでの幕開けとなった。  船出は多難だったが、中学の保健体育でのダンス必修化や五輪でのブレイキン採用といった追い風に加え、写真や映像映えする競技内容がSNSで注目を集め、観客動員数を年々増やした。  4年目の前シーズンは過去最多の計5万9000人を記録。今季開幕戦には満員の約5000人が詰めかけた。半井は「今まで見てきたものとは違う光景」と会場の熱狂に舌を巻いた。

今季からDリーグに参戦した(左から)大能寛飛、半井重幸、湯浅亜実

 日本のダンス界を取り巻く熱気をさらに広げるため、自分たちに何ができるか。  「ダンスやブレイキンの魅力を伝えたいというのが(参戦を決めた)1番中心にある気持ち。われわれだけでなく、Dリーグに参加しているダンサーみんなそうした気持ちを持っていると思う。戦友として、リーグを盛り上げていきたい」  3人の思いを代表するように半井は、表情を引き締めて語った。

◆金メダリストもさらなる可能性を追求

 湯浅は「新しいステージへの挑戦。メンバーの個性を輝かせながら、自分らしさを出せるパフォーマンスをしたい」と意気込む。金メダリストの立場に慢心せず、自らの可能性を追い求めている。  ブレイキンは2028年ロサンゼルス五輪の追加競技から落選。だが、選手たちは悲観することなくダンスの裾野を広げるため、踊り続けている。

 Dリーグ 2021年に開幕したプロダンスリーグ。5季目の今季は過去最多の14チームが、10月~2025年5月に実施されるレギュラーシーズンで総当たりする。各ラウンドで代表ダンサー8人が約2分間のパフォーマンスを披露し、「テクニック」や「コレオグラフィー(振り付け)」など6項目で勝敗を争う。勝ち点上位の6チームがチャンピオンシップへ進出し、シーズンチャンピオンを決める。湯浅はLIFULL ALT-RHYTHM、半井はKOSE 8ROCKS、大能はValuence INFINITIESの各チームに所属している。



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