京セラドーム大阪で29日に開幕する第49回社会人野球日本選手権大会に、今夏の都市対抗野球大会で久慈賞(敢闘賞)を受賞したTDK(秋田)の小島(おじま)康明投手(32)が出場する。
都市対抗野球大会ではJR東日本東北(宮城)の補強選手として5試合中、3試合に先発し、大会出場投手で最多の2勝を挙げて準優勝に貢献した。自チームで臨む今大会では、東京ドームで示した「打てそうで打てない投手」の真骨頂を再び京セラドームで発揮すべく、心身ともベストの状態で31日の1回戦、日本新薬(京都)戦に備える。
社会人球界にも直球の球速150キロ超の投手は珍しくない。その中で身長177センチ、体重88キロの小島投手が右上手から繰り出す直球は最速140キロ前後。カットボールとカーブ、チェンジアップとの球速差で相手打者を抑えるタイプだ。
「打てそうで打てない」一番の理由は1分間で平均約2600回転を計測する直球の回転数の多さ。同程度の球速の投手より400回転ほど多く、打者側からは「ボールが浮き上がってくる」感覚が増し、空振りやバットの芯を外した当たりが多くなる。「ボールの握り方は他の投手と変わらないが、右腕を上から振り下ろし、低めに投げる意識は常に心がけている」
今夏の都市対抗野球大会でも「補強が決まってからJR東日本東北の捕手勢と綿密にコミュニケーションをとり『場面ごとで投げたい、投げさせたい球種とコース』に食い違いが生じないよう心がけた。その点、(自チームで出る)日本選手権では日ごろから捕手と気心も通じてるから心配ない」と笑う。
茨城県出身で下妻二高、東京農大を経て、きらやか銀行(山形)で8年間プレー。都市対抗本大会には自チームで3回、補強で2回出場した。2022年9月に同行野球部の無期限休部が決まり「最初に、そして一番熱心に誘ってくれた」(小島投手)、TDKへ移籍して2年目。23年の日本選手権は出場選手登録こそされたが、春先に痛めた右膝を手術した影響で登板機会なし。ダッグアウトで率先して声を出し、バッテリー勢には自身の経験に基づいたアドバイスを伝え続けた。
TDKの佐藤康典監督(54)は、小島投手の存在を「野球に取り組む姿勢や経験量、チームメートとのコミュニケーション力を含め『ウチで野球を続けてくれて本当によかった』と思える選手。補強で参加した東北の他チームも『小島は東北社会人界のエース』と認めている」と評価する。
マウンドに立てば、きらやか銀行時代も含め大会初登板。8月のJABA長野大会優勝で4大会連続13回目の出場権を獲得したチームの目標「4強以上への進出」の先には、もう一つ温めてきた自身への思いがある。「登板した試合で試合をつくってチームの勝利に貢献し、(ベストナインなど)社会人球界の年間個人タイトルを獲得したい。都市対抗で久慈賞をいただいた選手として恥じない内容で投げられたのなら手の届かない夢じゃない」。温厚な語り口にも、目標達成への自覚と自信が垣間見えた。【熊田明裕】
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