【大阪学院大高-北稜】近畿大会で初戦を突破し、校歌を歌う大阪学院大高の選手たち=ほっともっとフィールド神戸で2024年10月21日、長宗拓弥撮影

 長年のブランクを埋めた。21日にほっともっとフィールド神戸であった高校野球秋季近畿大会で、大阪学院大高(大阪3位)が29年ぶりの白星を挙げた。今年の春季大会大阪府予選で大阪桐蔭、履正社の「大阪2強」を連破して初の頂点に立って話題を集めた。「2強時代を終わらせる」といって2023年春に指揮官となった社長監督の新チームも何かやりそうな予感が漂う。

「お手上げでした」

 「お手上げでした。たたこうと言っているのにフライを上げまくるので攻略する方法がない。途中からもう無理やなあと思っていましたね」

【大阪学院大高-北稜】初戦を突破して笑顔を見せる大阪学院大高の辻盛英一監督=ほっともっとフィールド神戸で2024年10月21日、長宗拓弥撮影

 飛躍の「仕掛け人」である辻盛英一監督は苦笑しながら試合を総括した。1回戦は初出場の公立校・北稜(京都3位)と対戦。相手の先発左腕の110キロ台の直球と90キロ台の変化球に翻弄(ほんろう)されるもどかしい展開となった。

 10安打しながらわずか1得点。変化球を捨て、直球に絞って何とか八回にもぎ取った1点を守り切っての辛勝に喜びを爆発させることはなかった。むしろ、選手たちの表情には反省の色がにじんだ。「3番・遊撃」で攻守の要である鶴丸巧磨選手(1年)は「もっと攻略法を早くみんなで共有すれば良かった。難しかったです」と振り返った。

 大阪学院大高は1995年秋の近畿大会で準決勝に進出し、翌年の春のセンバツでは初出場ながら8強入りを果たした。しかし、甲子園大会への出場はこの1回だけ。夏の甲子園には立つことはできず、目立った成績を残せていなかった。

 風向きを変えたのは、生命保険代理店の社長業と両立する辻盛監督だ。大阪市立大(現大阪公立大)野球部を強化した実績があり、経営者の視点を生かした合理的なチーム作りを模索。最新鋭の機材や客観的なデータを用いるなど改革し、激戦区の大阪で春の頂点を射止めた。

【大阪学院大高-北稜】1年春からレギュラー入りする大阪学院大高の鶴丸巧磨選手=ほっともっとフィールド神戸で2024年10月21日、長宗拓弥撮影

 しかし、夏に勝てるほど甘くなかった。シード校として臨んだ今夏の大阪大会ではまさかの初戦敗退。1年生ながら出場していた鶴丸選手は「自分がチャンスで打てなくて負けた。3年生には本当に申し訳ないことをした」と悔やむ。

 早々に始まった新チームは主力がごっそりと抜け、1年生6人が背番号1桁をつける若い布陣となった。辻盛監督には秋に近畿大会に出場できるイメージはなく、「(出場できる確率は)0%。大阪の2、3回戦で敗退するかな」と考えていたという。

「めちゃくちゃ練習する」

 うれしい誤算があった。「1年生はめちゃくちゃ練習するんです。予想よりもはるかに伸びました」。身長182センチ、体重90キロの樋爪(といづめ)信捕手(1年)は大阪府予選で本塁打を放つなど4番に定着し、「あんまりいないレベル。すごいですよ」と期待を寄せる。

 府予選の準決勝で大阪桐蔭に0―3で敗れたが、3位決定戦では近大付との延長十一回に及ぶタイブレークを制し、26年ぶりの近畿大会出場をもぎとった。

 秋の舞台は、来春の選抜高校野球大会の出場校を決める参考資料になるが、チームの目標はセンバツ出場よりももっと高いところにある。鶴丸選手は「大阪桐蔭と履正社の時代だとまだ言われていると思う。ここから(大阪)学院の時代を作っていきます」と力強く宣言する。まずは29年前に並ぶ近畿4強入りをかけ、優勝候補の一角である東洋大姫路(兵庫1位)に挑む。【長宗拓弥】

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