開幕戦から初出場校が「秋の大阪王者」を破った。19日にほっともっとフィールド神戸で開幕した高校野球秋季近畿大会1回戦。滋賀県を2位で突破した滋賀短大付が2019年夏の甲子園覇者である履正社(大阪1位)に4―1で逆転勝ちし、初勝利で8強入りした。周囲を驚かせた短大の付属校とは、どんなチームなのか。
ユニホームは紫を基調とし、左胸には「滋短附」の文字。春夏通じて甲子園出場はない。
「まだ実感がわかないのですが、うれしい。学校に新しい歴史を刻むことができた」。1点を追う六回に殊勲の逆転打を放った6番・北嶋朔太郎選手(1年)は感慨を込めた。
女子校から改称
学校は大津市にある。08年に滋賀女子から改称されて男女共学化された私立校で、野球部の歴史は翌年にスタートした。当時から指導に携わる保木(ほうき)淳監督は「ボールが1球もないところから始まった」と懐かしむ。保木監督は、滋賀県立安曇川高時代には主将の捕手として活躍し、大学卒業後は縁あってチームを創設する滋賀短大付の部長に就いた。
当初は野球の上達より、部員らの生活指導や授業のサポートに追われたという。「勉強が苦手な子も多くて、私が全教科を見て大学受験の指導をしていた」。練習では選手らと一緒に走り、泥だらけになった。そんな熱心な指導や進学実績が評判になり、入部希望者は少しずつ増えていった。
今では昨夏に引退した3年生を含めると70人を超える大所帯になった。専用グラウンドはなく、中学時代に活躍した選手が集まるわけでもない。保木監督は「(中学時代の)スタメンはこない」と笑うが、16年夏の滋賀大会で4強入りを果たすなど、上位に食い込む年もあった。
今大会はメンバーのうち半分以上が身長160センチ台と小柄なチームだが、小技や守備力を鍛えて野球の名門校にも対抗できるチーム力を蓄えてきた。
近畿大会での履正社戦も相手を2本下回る5安打ながら、少ない好機を確実に生かした。長打力ある履正社の強力打線を堅守でしのいだ。
エース左腕が原動力
原動力となったのがエース左腕・桜本拓夢(ひろむ)投手(2年)だ。直球は120キロ前後だが制球力に優れ、一回に先制点を許しても「想定内」だったという。試合前に履正社の打者の映像を何度も見返して「外中心の配球であればフライアウトが増える」と分析した作戦を着実に実行したからだ。チェンジアップを駆使し、丁寧に外角を攻めて打たせて取り、奪った三振はわずか1ながら1失点で完投した。
逆転劇を演じた選手を保木監督は誇らしげに見つめた。「10回やっても1回も勝てないくらい差があったと思うが、子どもたちが本当によく頑張った」。履正社とは5年前の練習試合でBチーム(2軍)に0―15で完敗していた。その時には「10回に1回でもいいから勝てるチームになろう」と目標を立てていたという。
26日の準々決勝は春夏通算55回の甲子園出場を誇り、春1回、夏2回の優勝経験がある天理(奈良1位)が相手だ。桜本投手は「自分たちは初出場でチャレンジャー。目の前の一戦一戦を勝ちきるだけ」と浮かれる様子はない。履正社に続いての強豪撃破となるか。【長宗拓弥】
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