絶対的な主役候補の存在が各球団の口を堅くした。24日のプロ野球・ドラフト会議。事前に1位指名を公表したのは、宗山塁選手(明大)へラブコールを送った広島のみだった。近年は複数球団が前日までには1位指名の選手を公表するケースが多かった中、異例の展開となった。
一般的に、1位指名の事前公表は選手への敬意を示すとともに、他球団へのけん制の意味合いも大きいとされる。
例えば「ビッグネーム不在」とされた2022年秋のドラフト会議では、事前に9球団が1位指名を明らかにした。先に名前を出すのは、他球団の指名を思いとどまらせ、自分たちの補強ポイントに合致した選手の交渉権を得られる確率を少しでも高めたい、うまくいけば「一本釣り」を狙いたい、との考えからだった。この年の1巡目の1位重複指名は浅野翔吾選手(巨人)、荘司康誠投手(楽天)が2球団競合したのみ。他の8球団は単独指名だった。
一方で今年のドラフト会議の情勢は正反対で、走攻守に高い評価を受けた宗山選手と本格派左腕・金丸夢斗投手(関大)という「目玉」への指名の集中が早い段階から予測された。
あるパ・リーグ球団関係者は、「突出した宗山選手、金丸投手を指名する場合は事前に公表してもしなくても、競合することは必至。一方で両選手以外の1位指名を考えた場合、単独指名の可能性を高めるためにドラフト当日、最後の最後まで情勢を見極めたい考えもあったのでは」と非公表が続いた要因を分析する。
結果的には宗山選手が5球団、金丸投手が4球団競合と人気が集中する一方で、争奪戦には加わらず、的確に補強ポイントをカバーする1位指名に回った球団もあった。11球団が1位指名未公表という異例の展開は、各球団の今回のドラフトの狙いや戦略の一端を色濃く浮き上がらせる結果になった。【角田直哉】
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