プリンセス駅伝(20日、福岡・宗像ユリックス発着)
倒れ込むように14位でフィニッシュしたベアーズのアンカー・矢治璃瑞奈(りずな)のほおを涙が伝う。初の予選突破のうれし涙と思いきや違った。「(最終区間の)6区は順位を落とさないことが仕事なのに(12位から二つ)落としてしまった」。涙の正体は悔し涙だった。
ベアーズは家事代行サービス業の草分け的な会社だ。2022年夏の創部時、仕事と競技を両立する「デュアルキャリア」を目指しつつ、23年にプリンセス駅伝、24年にクイーンズ駅伝に出場するという目標をチームで掲げた。
昨年はプリンセス駅伝初出場で20位だった。目標を現実にすべく、今大会の目標を「5位以内」に設定した。会社も、一部の選手の勤務時間を半日にするなどバックアップし、競技により集中できる環境を整えた。
目標へと近づいたのが、エース区間3区(10・7キロ)での坂口愛和(あいわ)の走りだった。予選突破のボーダーラインとなる16位でたすきを受けると「一人(単独走)で全部を走る力はない」と冷静に集団の中で体力を温存した。中間地点を過ぎるとペースを上げ、区間5位の好走でチームを8位まで押し上げた。4区以降の選手も粘り、有言実行を果たした。
選手たちは家事代行の現場業務などがあり、練習時間は限られる。坂口は「疲れてきつい時もあるが、練習から離れる時間があることで切り替えになっている部分もある」と両立のメリットを語る。
チームが掲げる次なる目標は、3年以内にクイーンズ駅伝で次回のシード権を得られる8位以内に入ることだ。創部時から指揮を執る高柳祐也監督は「3年計画の第一歩を踏み出せただけ」と淡々と話す。クイーンズ駅伝初出場に誰一人満足しない向上心がチームを押し上げている。【丹下友紀子】
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