関西六大学野球の秋季リーグは16日、最終節の3回戦が行われ、大商大が大経大に2―1でサヨナラ勝ちし、新リーグ発足以降の記録を更新する6季連続の優勝を決めた。今秋のドラフト有力候補に挙がる渡部(わたなべ)聖弥(4年)は九回の好機でバントをし、大学でのリーグ戦最終打席を終えた。この判断には渡部の強い思いがあった。
九回に大経大が1点を先制し、0―1で迎えた攻撃。渡部は無死一、二塁の好機で打席に立ち、ベンチからは「打て」のサインが出た。さらに、渡部がこの打席までにリーグ戦で放った通算安打数は歴代最多タイの119。あと1本打てば、記録が更新される場面だった。
それでも「1死二、三塁を作った方が勝ちに近いと思った」と迷いはなかった。初球で一塁線へのバントを決め、後続に託した。失策も絡んで同点に追いつき、最後は渡部と同じ広陵高(広島)出身の蜷川大(3年)の適時打で一気にサヨナラ勝ち。「勝ちに貪欲に、勝つことだけに集中した結果こうなって、本当にうれしい」と語った。
2年秋にリーグの新記録となるシーズン5本塁打を放ち、リーグ通算安打記録の更新にも迫るなど、その実力は折り紙付きだ。実際、長打が出ればサヨナラの場面で「打って還せる自信はあった」と話す。それでも、「こういう時のために、日々実戦形式でバントの練習をしてきた。苦手意識も全くなかった」と胸を張る。
リーグ通算安打の記録更新についても「記録は全くどうでもよかった。勝つことだけを考えた」とあっけらかんと話した。大商大の富山陽一監督も「最後の打席になるかもしれないのにバントをする、素晴らしい人間じゃないですか。そういう子だから、(今後も)いろんな意味で成功するでしょうね」と賛辞を惜しまなかった。
24日に迫ったドラフトに向けても「チームが勝てたので、最高の気持ちで迎えられます」と笑みをこぼした。どこまでもチーム思いの屈強な打者が、心の強さも見せた大学最後の打席だった。【吉川雄飛】
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