2024年からプロ野球 ウエスタン・リーグに参戦した「くふうハヤテ」の最終戦が本拠地・静岡市で行われたが、有終の美を飾ることはできなかった。今季は120試合で28勝84敗8分。ダントツでリーグ最下位だ。それでも希望の光は見える。最終戦の観客は今季最多で、憧れのNPBの1軍を目指し、次のステージに進む選手もいる。

待望の新球団はゼロからのスタート

くふうハヤテ・赤堀元之 監督:
ゼロからのスタートだったのでどうなるかなという部分はシーズン初めにあったし、ほんとに勝てるのかなと

くふうハヤテの赤堀元之 監督はチームを率いた当初の心境を振り返る。

66年ぶりに誕生したプロ野球の新球団「くふうハヤテ」。

静岡市の10年以上にわたる球団誘致構想がようやく実現した形だ。

NPB(日本プロ野球機構)のファーム・リーグ拡大方針に伴い、都内に本社を置くハヤテグループが名乗りを上げ、静岡県に新球団が誕生した。

同時期に参入したオイシックス新潟が独立リーグのチームを母体にしたのに対し、くふうハヤテはゼロからのスタートだった。

静岡県藤枝市出身の赤堀監督のもと、トライアウトやスカウトで獲得した選手36人が集い、2024年1月に新たな一歩を踏み出す。

NPBから参入を承認されてから、わずか1カ月半という短期間でのスタートだった。

静岡ゆかりの選手も8人参加。

初代キャプテンに選ばれた地元・静岡西高校出身の高橋駿 選手は「野球が大好きというのをこのグラウンドで表現して、元気と笑顔を静岡に届けられたらいい」と抱負を語った。

開幕戦は連敗スタート その後も…

ただ2軍とはいえ対戦相手は実力ある球団。

ホームにオリックスを迎えた開幕戦はWBC日本代表・宮城大弥 投手が調整登板で立ちはだかり、連敗スタートとなった。

それでも開幕7戦目。2023年のセ・リーグ王者・阪神を相手についに初勝利。

最後は、常葉菊川高校出身の田中健二朗 投手(元DeNA)が締めて、歴史の1ページが刻まれた。

4月には3連勝を記録するなどファンの期待も高まったが、その後は先制されると追いつけないまま敗れる試合が続き、赤堀監督が目指す「守備から主導権を握る野球」を体現できなかった。

最終戦には本拠地最多の2355人

ウェスタン・リーグの6チームの最下位で厳しい戦いが続く中、9月29日に本拠地「ちゅ~るスタジアム清水」で最終戦が行われ、参入初年度の最後の挑戦を応援しようと今季最多の2355人の観客がつめかけた。

試合は2本のホームランが飛び出すなど見せ場を作ったが、残念ながらこの日も敗戦。

今季は120試合で28勝84敗8分け。勝率は.250に終わった。

同時期に参入したイースタンリーグのオイシックス新潟は126試合で41勝79敗6分け、勝率は.342だった。

くふうハヤテ・赤堀元之 監督:
来年は1つでも多く勝ちを皆様と一緒に分かち合えるようにやっていきたい

NPBの1軍目指し次なるステージへ

勝つことでチームは成長し、勝つことで選手は次なるステージに進む。

1軍への参戦がないくふうハヤテの選手にとって、ここはNPB12球団へのアピールの場だ。

今年、それを実現させたのが西濱勇星 投手だ。
オリックスから戦力外通告を受け、くふうハヤテに入団した西濱は最速155kmの速球を武器に防御率リーグ5位と活躍し、東京ヤクルトとの育成契約を勝ち取った。

西濱勇星 投手:
今度こそ支配下選手に上がって、1軍で活躍できるように頑張りたい

限界を感じ引退する選手も

また、くふうハヤテで自らの限界を感じ引き際を決めた選手もいる。

プロ生活18年、ソフトバンクで日本一にも輝いた35歳のベテラン・福田秀平 選手だ。

俊足好打の福田は新天地で再起をかけ、球団初のサヨナラ勝利の立役者になるなどチームの顔として活躍してきたが、持病の肩甲骨の痛みが治まることはなく、現役生活に終止符を打つ決断をした。

新球団最大の功労者はこれから新たな人生を歩んでいく。

福田秀平 選手:
静岡のいろいろな方たちとも出会うことができて、すごく大きな1年だったと思う。ハヤテは“伸びしろ”しかないチームだと思うので、陰ながら応援していきたい

観客動員数を増やすために

数々のドラマはファンを魅了する一方で課題もあった。

くふうハヤテの池田省吾 球団社長は「チームができたことはかろうじて知ってもらえたけど『いつどこで試合をやっているんだ?』とよく言われる」と苦笑する。

平均入場者数は約800人と当初の目標はクリアしたが、開幕戦や最終戦など球団が力を入れる試合では集客に課題が残った。

開幕戦は目標4000人だったが実際には1631人。最終戦は目標は3000人だったが実際には2355人だった。

静岡市の中心部から離れた球場は交通アクセスが悪く、駐車場も少ないため、想定よりも観客は集まらなかった。

そこでくふうハヤテはプロ球団では稀な試みを実施。

JR清水駅から球場まで観客を送るため、チームの遠征用バスを運行させたのだ。利用者は「ファンが乗っていいのかなとドキドキします」と喜ぶ。

さらに「県民の無料招待日」なども設け、幅広い世代のファン獲得を目指した。

くふうハヤテ・池田省吾 球団社長:
みなさんにも試合に来て楽しんでいただけるような環境をしっかり作っていきたい

2024年に新設球団として確かな一歩を踏み出したくふうハヤテ。

ゼロからのスタートで試行錯誤の1年だったが、これからもきっと静岡県の野球界の発展に貢献してくれるだろう。

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