銀座にある小学校の先生が女子サッカーの全国リーグ入りを目指し、ピッチに立つ。葛飾区を拠点に活動する関東女子サッカーリーグ1部「南葛SCウイングス」は28日から、上部のなでしこリーグ2部との入れ替え戦予選に挑む。ゴールキーパー(GK)の高橋純佳さん(29)は、学校とグラウンドを行き来しながら夢を見据える。

ミニゲームでゴールを守る南葛SCウイングスの高橋純佳さん(左)=葛飾区で

◆銀座・泰明小で体育を指導、5時半起床で出勤

 朝9時過ぎ、銀座5丁目にある中央区立泰明小。「屈伸からー!」。体育の授業で準備体操をする児童たちの中心に、ポロシャツ姿の高橋さんがいた。

児童の前に立ち、ダンスの指導をする高橋純佳さん=中央区銀座の区立泰明小学校で

 5時半に起床し、7時50分には学校に到着。非常勤講師として体育を教える。今は、各学年が10月の体育学習発表会で披露するダンスの指導に当たっている。子どもたちの見本になるよう、左右を反転させた振り付けを覚えた。「学校にいる間に全部覚えます」  授業中の水分補給時間には、子どもたちが次々と駆け寄ってきて話しかける。休み時間には一緒に鬼ごっこやドッジボールに興じるが、廊下を走る児童に「走らない!」と指導もする。子どもたちから「優しいけどちゃんと注意もしてくれる」と評判という。

◆夜はチームの練習、地元選手としての誇り

 先生から選手へ、ギアを切り替えるのは午後3時50分ごろ。退勤すると、地下鉄でいったん葛飾区内の自宅へ。おにぎりなどの補食をおなかに入れると、緑色のGKウエアに着替え、自転車に飛び乗って区内の練習場へと向かう。

ミニゲームでゴールを守る南葛SCウイングスの高橋純佳さん(中央)=葛飾区で

 ランニングやストレッチで体をほぐした後、午後7時ごろ練習が始まった。他のポジションの選手たちと分かれ、キャッチングの基本練習。続いてシュートストップに移る。身長170センチの高橋さんはゴールの前で長い腕を伸ばし、鋭いシュートに俊敏に反応する。  この日は金曜日。練習後に声をかけると「くたくたです」と苦笑した。でも、「サッカーができるから大変でも頑張れる」。生まれも育ちも葛飾区。大学卒業後、別のチームを経て2020年シーズンから、ウイングスのゴールを守ってきた。「地元出身者なので中心となって盛り上げたい」と話す言葉に力が入る。

◆会社員、保育士、介護職員…他の選手も掛け持ちで夢追う

 なでしこリーグ2部との入れ替え戦予選は28日から10月2日、福島県で開かれる。各地域リーグの上位でなでしこリーグ入りの資格を満たした5チームが総当たりで激突。上位2チームに勝ち残り、なでしこリーグ2部の下位2チームとの入れ替え戦に勝てば、晴れて昇格となる。  高橋さんをはじめウイングスの選手のほとんどは、昼間は会社員や保育士、介護職員などとして働きながら必死にボールを追い続けてきた。昨年の入れ替え戦予選では緊張から思うように体が動かず涙をのんだ。高橋さんは「今年こそ、地元のチームを全国リーグに上げたい思いは誰よりも強い」と決意を語る。

「いつものプレーを」と語る南葛SCウイングスの松本彰監督=葛飾区で

 今シーズンから就任した松本彰監督(45)は「仕事をしてから集まるぐらい、純粋にサッカーが好きで向き合ってくれている選手ばかり」と高橋さんらを頼もしそうに見やる。「試合に大きい小さいはない。いつも通り楽しんで、いつものプレーをしてほしい」  ◆文・鈴木里奈/写真・七森祐也、鈴木里奈  ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 

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