凱旋門賞に参戦予定のシンエンペラー=2024年8月6日、井内利彰さん撮影

 今週から秋のGⅠがスタートし、スプリンターズSが行われる。昨年の覇者ママコチャ、春のスプリント王決定戦、高松宮記念を勝ったマッドクールが参戦する。高松宮記念で2着のナムラクレアも出走を予定し、3着だった香港馬のビクターザウィナーも再び来日する。

 すでにGⅠ実績のある馬に交じっても1番人気の支持を集めることになりそうなのが、3連勝中のサトノレーヴだ。「GⅠホースもいる中でどうして1番人気になるの?」というのが、一般的なファンの素朴な疑問だろう。しかし、長年競馬の予想で知識を深めてきたファンなら、4月に中山芝1200メートルで勝った春雷Sのパフォーマンスに注目するはず。スプリンターズSと同じ舞台で1分7秒1の勝ち時計は非常に優秀なのだが、これが過去10年のスプリンターズSで最も速い勝ち時計だった2019年、21年と同じ。春雷Sだけ走れば勝てるという予想にはいろんな意見もあるだろうが、予想する上で走破時計は重要なポイントになることは間違いない。

 そして、サトノレーヴは、13年のスプリンターズSに出走して2着だったハクサンムーンの半弟になる。当時の1着馬がサトノレーヴの父であるロードカナロア。これこそスプリンターズSを勝つために配合されたロマンの血統と言ってもよいだろう。

 10月6日はフランスのパリロンシャン競馬場で凱旋門賞が行われる。ディープインパクト、オルフェーヴルといった日本の名馬が幾度となくはね返されてきたレースだが、今年はシンエンペラーが参戦予定。その前哨戦となった愛チャンピオンSでは見せ場たっぷりの3着。このレース内容を見て「今年こそは」と思ったファンも多いことだろう。

 シンエンペラーのオーナーは人気ゲーム「ウマ娘」で知られるサイバーエージェントの藤田晋社長。JRA(日本中央競馬会)の馬主として数々の重賞を勝っており、フォーエバーヤングが交流GⅠの全日本2歳優駿を勝っている。ただ、JRAのGⅠはまだ勝てておらず、凱旋門賞を勝つことがあれば、前代未聞の記録ということになりそうだ。

 そんなシンエンペラーの全兄がソットサス。実は兄も愛チャンピオンSを4着に敗れた後、凱旋門賞にチャレンジして勝っている。

 2週にわたって「競馬は血統なのか」と思い知らされることになるのかどうか。スプリンターズSと凱旋門賞。どちらのレースも注目してほしい。(競馬ライター)

いうち・としあき

 1976年生まれ。東大阪市出身。高校の同級生の影響で競馬に興味を持った。92年の菊花賞(GⅠ)を自身と同じように小柄なライスシャワーが制し、その魅力に取りつかれた。大阪経大卒業後、競馬予想サイトの運営会社勤務を経て、フリーライターに。

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