秋場所で優勝し総理大臣杯を受け取る大の里(左)=東京・両国国技館で2024年9月22日、渡部直樹撮影

大相撲秋場所千秋楽(22日、東京・両国国技館)

○阿炎(引き落とし)大の里●

阿炎に引き落としで敗れた大の里(手前)=東京・両国国技館で2024年9月22日、三浦研吾撮影

 今場所は前に出る相撲を評価された大の里だったが、最後に詰めの甘さを見せてしまった。「勝って(場所を)締めたかったんですけど……」。ほろ苦い思いも混じりながら、賜杯を抱いた。

 阿炎の右のど輪が早かった。立ち合いの踏み込みの甘かった大の里は上体がのけぞり、阿炎が左に体を開くと土俵にはった。先手先手の攻めを評価していた八角理事長(元横綱・北勝海)も渋い顔だ。「来場所はこういう立ち合いをしちゃダメだよね」と忠告した。

 とはいえ、大関取りのかかる場所で成長の跡を確かに示した。磨き上げたのは右差し、強力な左おっつけという必勝の形だ。

秋場所で優勝しインタビューに応じる大の里(右)=東京・両国国技館で2024年9月22日、渡部直樹撮影

 今場所前、師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)を相手に、同じ相手と相撲を取り続ける三番稽古(げいこ)も行った。目的を問われた二所ノ関親方は「部屋に稽古相手がいなかったから」とけむに巻いた。だが、タイプは違うものの、左おっつけを得意とした師匠の胸を借りられたことは大きな効果があった。「前に出て勝っているから(おっつけの)良さが引き立つ」と二所ノ関親方。満票での技能賞獲得が、その証左と言える。

 既に大関昇進を確実にしている。日本相撲協会によると、初土俵から負け越しなし(五分を含む)での昇進となれば昭和以降では羽黒山(元横綱)以来。出世に髪の長さが追いつかず、大いちょうは「まだ結えないですね」。このままなら異例の「ちょんまげ大関」が誕生する。

優勝パレードで喜ぶ大の里(右)=東京・両国国技館で2024年9月22日、渡部直樹撮影

 その快進撃は、他の上位力士のふがいなさの裏返しでもある。横綱不在の場所で琴桜、豊昇龍の両大関は勝ち越しがやっとという結果に、八角理事長は「うかうかしていると(大の里に)抜かれちゃうよ」。新たな看板力士の誕生で、角界の勢力図はさらに塗り替えられる可能性をはらむ。【岩壁峻】

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