本大会出場を決めて喜ぶ日本新薬の選手たち=京都市右京区で2024年9月18日午後0時42分、大東祐紀撮影

 第49回社会人野球日本選手権の近畿地区予選は18日、京都市のわかさスタジアム京都で代表決定戦があり、日本新薬(京都)がミキハウス(大阪)に5―1で勝ち、16大会連続26回目の本大会出場を決めた。日本選手権は今秋に京セラドーム大阪で行われる。

 1―1の四回無死一塁。日本新薬の主将・橋本和樹はミキハウスの元プロ右腕の落ちきらないフォークを完璧に捉えた。決勝の適時二塁打。「野球人生で一番しんどかった」という、厳しい練習を乗り越えた先の3連勝での代表権獲得だった。

 都市対抗出場を逃した企業チームの夏は心身ともつらい。会社への引け目、同僚への申し訳なさ。えてして、日本選手権の予選が始まるまでの3カ月間、猛練習が課される。2年連続でその憂き目にあった日本新薬にとって、この夏は特に過酷だったという。

 象徴が、桂川にかかる久世橋近くの土手を走る練習。十数年前、鎌田将吾監督の若かりし選手時代まではあった名物の「土手ダッシュ」が復活した。坂道を含む土手を2分ほどただひたすら走る。それをほぼ毎日10本から20本。練習中に嘔吐(おうと)する者もいた。過密な近畿の予選を戦う体力、そしてしんどい時にこそ踏ん張れる気力を醸成するためだ。

 効果はてきめんだった。「選手たちは『飼い猫』から『野良猫』になった。それくらい目の色が変わった」と鎌田監督。ピンチでも「土手よりしんどいものはない」との言葉が飛び交った。「これだけやった、という思いがあった」と橋本。自信を胸に、都市対抗予選ではいずれも接戦の末に敗れた日本製鉄瀬戸内、ミキハウスを今予選では逆転で連破した。

 試合終了後、ミーティングの輪から離れた鎌田監督は見上げながら、「あー、しんど」。選手以上だろう。とてつもないプレッシャーから少し解放され、就任1年目の指揮官から本音が漏れた。【大東祐紀】

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