ボートの練習をする昴学園の野球部員=大台町の宮川で2024年9月11日午後5時59分、下村恵美撮影

 三重県大台町の奥伊勢湖漕艇場で14、15の両日に開催されるボートの県高校新人ローイング競技大会に、県立昴学園高(同町)の野球部員たちが出場する。8月に3年生が引退してボート部員がゼロに。代わりに下半身の強化を兼ねて朝は野球、放課後はボートに取り組んできた野球部員たちが「試合」に挑むことになった。

 ボート部があるのは昴学園を含めて県内に4校。競技は1人でこぐシングルスカル、2人乗りのダブルスカルと5人1チームの舵手(だしゅ)付きクォドルプルがある。野球部員が出場するのはクォドルプル。昴学園でもここ数年は部員が5人そろうことはなかったといい、顧問の春名祐希さんは「久々にクォドルプルに出場できる」と喜ぶ。

 出場するのはいずれも2年生。羽柴煌さん(16)と布川大祐さん(17)はけがなどで野球の練習ができず、5月ごろからボート部で筋トレを積んできた。そこに岩田昌也さん(16)が声でチームをまとめるコックスとして加わり、主将を務めることになった。野球の秋季大会まで1カ月もない8月中旬には、下半身の力を見込まれて児玉琉海さん(16)と坂上悠翔さん(17)が助っ人として合流し、チームが完成した。

主将でコックスの岩田昌也さん=大台町の宮川で2024年9月11日午後5時59分、下村恵美撮影

 5人は授業でボートをこいだことはあるが、競技は初めて。競技用船艇は幅が狭くて長く、最初は乗った時にバランスをとることすら難しかったという。大会まで実践を積みたかった8月下旬以降には、台風10号の接近が練習を阻んだ。結局練習できたのは5回くらい。しかし、普段から寮で生活を共にする5人は徐々に息が合うようになった。

 舵手として1人だけ逆向きに座る岩田さんは「しんどくなるほど、みんなからもイチ、ニーと声が出て、スピードも上がる」と手応え十分。また、ペースメーカーの児玉さんは「俺が引っ張るという気持ちで」とオールに力を込める。

 競技は1000メートルを計2回行い、合計タイムで順位が決まる。上位2チームは10月19日から愛知県である中部高校選抜大会に出場できる。

 一方、秋季の高校野球県大会は14日に開幕。シード校の昴学園は21日に初戦を迎える。ベンチ入りが有望視されるメンバーもそれまではボートに専念。「全員で息を合わせ、好タイムを残したい」と意気込んでいる。【下村恵美】

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