大相撲秋場所6日目(13日、東京・両国国技館)
○大の里(押し出し)正代●
馬力相撲を持ち味とする同士の対戦で、大関経験者を一方的に押し込んだ。大関取りへ、何より内容が問われる場所で大の里が意義深い白星を挙げた。
正代とは、初顔合わせ。胸を出す立ち合いの相手に強烈なもろ手突きで上体を起こす。さらに、休みなく左からおっつけて腰を浮かせ、最後は右に押し込んで一気に土俵外へ追いやった。
辛勝した初日以外は、先手を取る相撲が光る。安定した取組内容が続いても、「集中するだけです」。単独トップを維持しても「気にしていないです」。支度部屋でほとんど目をつむって質問に耳を傾ける姿は、にわかに騒がしくなる周囲とあえて距離を取っているようにも映る。
親方衆の評価は上々だ。「まともに当たる相手に思いっきりいけた。最高じゃない」。八角理事長(元横綱・北勝海)がこうたたえれば、土俵下で見守った九重審判長(元大関・千代大海)は「今の番付が出た相撲だった」と、関脇の大の里と現在は平幕の正代に地力の差があるとみた。
この日は母校の新潟・海洋高相撲部総監督の田海(とうみ)哲也さんが国技館で観戦した。夏場所で初優勝した教え子の額がはっきり見える席に座ると、田海さんは「言葉では言い表せない思い。涙腺が緩みそう」。眼前で白星を挙げ、恩師をさらに喜ばせた。
成績次第では場所後の大関昇進も見えた7月の名古屋は勝ち越しはしたものの、序盤は負けが込んだ。大の里は「考えすぎた」と振り返っている。無心に前へ前へ出て初日から白星を重ねる今場所の姿を見ると、その反省は生かされているようだ。【岩壁峻】
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