サッカー日本代表は5日、2026年に米国とカナダ、メキシコで共催されるワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会のアジア最終予選の初戦で中国に7―0で快勝した。約7カ月ぶりに代表に復帰した三笘薫選手(ブライトン)や伊東純也選手(スタッド・ランス)のゴールに沸いた一方、チケットは完売に至らず、会場の埼玉スタジアムのスタンド上段では空席も見られた。「歴代最強」の呼び声も高い現代表にもかかわらず、伸びない入場者数に関係者も頭を悩ませる。
満員ならず「えっ」
「メンバー発表でチケット枚数は少し伸びたものの、(最終予選の)初戦で、しかも埼玉スタジアムで満員にならないのは理想的な状況ではないですよね……」
試合前日、チケット販売数を確認し、日本サッカー協会の関係者は険しい表情で語った。
W杯に8大会連続の出場を目指す日本代表は、これ以上ない好スタートを切った。中国相手に前半から得点を重ねて圧勝した。入場者数は5万2398人。平日夜の開催ということを考慮すれば十分と言えるが、過去の代表戦と比較すると、さみしさはある。
前回のカタール大会最終予選は新型コロナウイルス禍における入場制限があった。2大会前のロシア大会最終予選の初戦、16年9月のアラブ首長国連邦(UAE)戦は同じ埼玉スタジアムで、観衆は5万8895人だった。
「以前は抽選で当たればラッキーだった。今回は出遅れたのにチケットが買えてびっくり。代表戦で満員にならないのは『えっ』ってなりますね」と語るのは60代の男性サポーター。長年、日本代表を応援していて変化を感じているという。「W杯に出場するのが夢だった時代から、今は出場して当たり前という空気になっていて、『応援しなきゃ』という気持ちが薄まっているのかな。特に今回はそう感じる」と話す。
「海外組」が増え…
今回のW杯は出場枠の増加に伴い、アジアの出場枠は前回大会までの「4・5」から「8・5」に大幅に拡大した。最終予選は18チームが3組に分かれてホームアンドアウェー方式で争い、各組2位までが出場権を獲得。3、4位はプレーオフに回る。今後はオーストラリアなどの強豪との対戦が控えているとはいえ、W杯出場へのハードルは大きく下がった。
代表選手との「距離」を指摘する声もある。かつては珍しかった「海外組」だが、今ではほとんどが海外のトップリーグでプレーしている。世界的な評価を手にし、選手個人の成長にもつながっている一方、ファンが直接プレーする姿を見る機会は減った。
代表歴のあるベテランのJリーガーは「海外の選手が多すぎて、日本代表の人気がちょっと落ちているんじゃないかなって思う時はある。海外の選手のサッカーって、見る機会はJリーグと比べて少ないと思うし。コアなサポーターの人たちは見るかもしれないけれど、ライト層のところはあまり見ない」と実感しているという。
日本代表は今後、アウェーで2試合戦った後、10月15日に埼玉スタジアムでオーストラリアと対戦する。この試合は相手が強豪ということもあり、初戦を上回るペースでチケットは売れているという。中国戦後、スタジアムの空席について問われた日本サッカー協会の宮本恒靖会長は「いい盛り上がりを見せてくれたと思いますし、こうやってたくさんのゴールでまたいい試合を見せていくことで、よりたくさんの人に入ってもらえるように期待しています」とコメント。盛り上がりを高めていくことができるか。【生野貴紀、高野裕士】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。