パリ・パラリンピックの開会式で入場行進をする日本選手団=コンコルド広場で2024年8月28日午後9時15分、玉城達郎撮影

 第17回夏季パラリンピック・パリ大会が28日夜(日本時間29日未明)、開幕した。2大会ぶりに有観客で開かれる「多様性の祭典」となり、障害のあるアスリートたちは見る者の間近でプレーを披露する。障害や異なる人種、宗教といった背景に基づいた差別が繰り返される中、大会には、共生社会の実現に向けてスポーツイベントにとどまらない役割が期待される。

 パリでのパラリンピックの開催は初めて。開会式は午後8時から、オリンピックと同じ「ゲームズ・ワイド・オープン(広く開かれた大会)」の理念に基づき、パリ中心部のシャンゼリゼ通りとコンコルド広場を会場にして開かれた。

 「パラドックス 不和から調和へ」と題され、コンコルド広場では、ライトアップされたオベリスクが中心にそびえるステージで式典が行われた。

開会式で披露されるパフォーマンス=コンコルド広場で2024年8月28日午後8時17分、玉城達郎撮影

 序盤のショーは、動きをそろえた140人のグループと、対照的に障害がありながらも車いすや義足で自由に動き回る16人がピアノ演奏に合わせてパフォーマンスを披露した。各国・地域のの選手団は旗手を先頭に入場し、国旗を振りながらステージの周りに集った。

 史上最多となる167の国と地域に8人の難民選手団を加えた約4400人の選手が出場し、9月8日まで22競技549種目で行われる。

 選手入場後は国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドルー・パーソンズ会長が「世界中で紛争が激化し、憎悪と排斥が広がる今こそ、一つになりましょう。選手たちはパフォーマンスを通じて偏見を覆し、可能性を見せてくれます。称賛と尊敬に値する存在だと示してくれるはずです」とあいさつ。フランスのマクロン大統領が開会を宣言した。

 一方、世界各地では紛争や武力侵攻が続いている。

 今大会では五輪同様、「中立選手」としてロシアから88人、ベラルーシから8人の選手も参加する。ただ、26日にはロシアのミサイル100発超によるウクライナ各地への大規模攻撃で多数の死傷者が出るなど、2年半を超えたロシアのウクライナ侵攻は終息の気配もない。

 ウクライナ・パラリンピック委員会のワレリー・スシュケビッチ会長は開会式前日の記者会見で「五輪では15人だったロシア人選手が、なぜパラでは90人近くも参加するのか」と批判。IPCから「大会期間中のあらゆる政治的言動や抗議活動を禁じる」と通達を受けたことも明かし、「『平和』の訴えが、政治的として禁じられる理由も分からない」と不満を示した。開会式ではウクライナ選手団が入場すると、ひときわ大きな拍手が湧き起こった。

 スポーツを通じて分かち合うはずの「共生」の理念にも、戦争は影を落としている。

 日本からは海外開催では最多となる175人が21競技に出場する。石山大輝(陸上)と西田杏(競泳)の両選手が旗手を務め、76番目に登場した。【パリ川村咲平、春増翔太】

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