第106回全国高校野球選手権で、93年ぶりの8強入りを果たした島根代表の大社(島根県出雲市)。地方の県立高校が優勝候補を次々と破る快進撃に、地域住民だけでなく日本中の高校野球ファンが胸を熱くした。大社の石飛文太監督やエースの馬庭優太投手(3年)らが26日、出雲市役所を訪れ、飯塚俊之市長らに結果を報告し、大会を振り返った。
大社は1回戦でセンバツ準優勝の報徳学園(兵庫)に3―1で勝利。2回戦の創成館(長崎)、3回戦の早稲田実(西東京)はいずれも延長タイブレークの末に競り勝った。準々決勝で強打の神村学園(鹿児島)に2―8で敗れた。
選手たちが特に語ったのは、ベスト8を決めた早稲田実との一戦だ。
大社は九回裏、同点に追いつき、さらに1死二、三塁でサヨナラの場面を迎えた。早稲田実は、スクイズや内野ゴロで本塁生還を防ぐために、左翼手(レフト)を投手と三塁手の間を守らせる勝負に出た。
打席に立ったのは、この試合で3安打の藤江龍之介選手(3年)。「あの試合は調子が良くて最後は自分で決めようと思ったら、レフトが前に来ていて打席で動揺した」。3球目を振り抜いた打球はその左翼手の元へ飛んでしまい、追加点を挙げられず延長タイブレークに突入。「相手投手の圧に押されて、レフトがいたとこに打っちゃいました」と照れくさそうに振り返った。
しかし大社は、堅い守りで十回、十一回ともに0点に抑え、3―2で勝利。この試合を一人で投げきった馬庭投手は「今までの人生で1番大事な試合だと思った。勝ち切るっていうことが自分の成長につながる思って投げました」と語った。
1回戦から準々決勝まで、大社のアルプス席は地元から駆けつけた応援団で埋まり、大声援が送られた。石飛監督は高野連の関係者から「あれだけ全員が声を出す応援はない」と言われたエピソードを紹介。「皆さんの応援が1試合1試合大きくなっていた。本当にありがたい。感謝の気持ちで戦った」と語った。
また、捕手としてチームを引っ張った石原勇翔主将は「試合中にアルプスを見るとたくさんの方が一生懸命声を出していて、鳥肌が立つような応援だった。甲子園で4試合、全力でプレーできたのは出雲市民をはじめたくさんの応援のおかげ。それを力に変えることができた」と感謝した。
大社の選手らは、10月に開催される国民スポーツ大会佐賀大会の野球競技に出場する。【松原隼斗】
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