パリオリンピックでレスリングの桜井つぐみ選手と清岡幸大郎選手が金メダルを獲得し、高知県に92年ぶりの金メダリストが誕生。ダブル金の立役者、桜井優史監督に試合後の心境や選手の子ども時代の指導について聞いた。
2人が金メダル「想像できなかった」
桜井優史監督は桜井つぐみ選手の父であり、清岡幸大郎選手の恩師。 2日前(13日)にパリから帰国したばかりの桜井監督は「まだ夢の続きにいるような感じ」だと話す。
この記事の画像(13枚)2、3歳頃の桜井選手と清岡選手が写った高知レスリングクラブ立ち上げの時の写真を見て、桜井監督は当時を懐かしんだ。
「日本一の選手を作りたい」という思いから立ち上げたクラブだったが、2人がオリンピックで金メダルを取るという今の状況は想像できなかったと桜井監督は話す。
日本一という目標が世界一につながったパリオリンピック。
その試合を振り返ると、金メダルが確定した瞬間、真っ先に桜井選手に駆け寄ったのは育英大で桜井選手を指導した柳川監督で、その後、桜井監督が駆けつけ、3人で抱き合い涙を流すシーンが印象的だ。
「本当に金メダルを取らせてやりたかったので。本当によく頑張ったっていうことで、すごく私もうれしかった」と桜井監督が当時の心境を語る。
試合後、桜井選手は「もうよくやったっていう風に言ってくれて」と、監督に向けてコメントを残した。
試合後の桜井つぐみ選手:
このオリンピックのためにたくさんの時間を犠牲にして、自分たちのために厳しい練習も厳しいことも言ってくれたし、 やってきてよかったなって思いました。
桜井選手がパリで金メダルを取る確信があったのかを聞くと…。
桜井優史監督:
世界選手権も3連覇してますので、つぐみの普段の力を出せれば大丈夫なんじゃないかなっていう思いがあったんですけど。ただオリンピックの舞台ですので、それができるかどうかっていうのが少し不安なところもありました。
金メダル獲得後は「頑張ってよかったね」「おめでとう」と話したという。
「私の夢でもあった」という桜井選手の金メダルを首にかけ、2人で撮った写真も紹介された。
清岡選手はノリノリ「本当に強い」
桜井監督のもう1人の教え子、清岡選手については「ノリノリ」だったと振り返る。
桜井優史監督:
すごく仕上がりも良かったので、つぐみが優勝した後ですごく期待をして見てたんですけど、本当にノリノリで、これまで以上のすごい仕上がりで、いい試合をしてくれました。
桜井監督は、「大きな舞台でこれまでも力を発揮してきた選手ですので、これまで以上の素晴らしいレスリングをしてきましたね」と試合について話し、元世界チャンピオンを相手に勝利した清岡選手を「本当に強い選手」と語った。
試合後、教え子2人の金メダルをかけた桜井監督。
「正直、感情もよくわからないような感じだったんですけど、今考えるとこれが夢のような瞬間だったんじゃないかな」と振り返る。
試合後の清岡幸大郎選手:
ずっと見てきてもらった先生に、ずっと一緒に戦ってきたつぐみと2人で金メダルという結果を残して、またその金メダルを2つ一気に桜井先生にかけられたっていうのは、本当にこれ以上ない幸せなことだと思いますし、桜井先生にとってもこれまで頑張ってきたことが報われたんじゃないかなと思います。
中学校1年生から夢はオリンピック
高知さんさんテレビは、桜井選手が世界に出る前から取材をしていて、2人がレスリングをする映像も残されている。
桜井監督は、「子どもたちの夢が、目標が高いレベルにあったので、結構厳しくやってました」と当時の指導について語った。
桜井選手が中学1年生の時の映像には、「当たり前のことやってくれんか。中学校1年生に何回こんなこと言わすの」と指導する桜井監督の姿があった。
桜井優史監督:
中学校の時は本当につぐみは素直で。しっかり頑張ってくれてて。 高校に入って、私と同じ学校に来てから、 少し反抗期的なものもあってですね。なかなかうまくいかないこともありました。
――自分の娘に対して怒る時に葛藤はないか?
つぐみもなかなか勝てない時期もあってですね。けど、それでも一生懸命やってて、つぐみも勝ちたいし、私も勝たせたいっていう思いがあったので、本当に一生懸命やってた形が厳しくっていうところで。
中学校1年生のインタビューで、すでに「オリンピックで優勝すること」を夢として語っていた桜井選手。
オリンピックで金メダルを取りたいという夢はいつ頃から持っていたのかを桜井監督に聞くと、「多分、小学校3年生頃から」で、女子レスリングの黄金時代に刺激されたという。
桜井優史監督:
ちょうどその頃にオリンピック3連覇の吉田選手であったりとか、4連覇の伊調選手であったりとか、そういった方と触れ合う機会があったので、その辺りからオリンピックを意識するようになりました。
県民栄誉賞も!勇気を与えた2人
試合が行われたのは日本では真夜中だったが、多くの人が快挙に注目していた。
パブリックビューイングの映像を見た桜井監督は、「懐かしい顔も見えて。つぐみのこれまでを知ってるいろんな方々に、こうやって応援をしていただいて、本当にうれしいこと」とコメント。
92年ぶりの快挙に県内では号外も配られ、多くの県民に勇気と元気を与えた。
そして、浜田知事が2人に県民栄誉賞を新設すると発表した。
浜田省司知事:
夢と希望、元気と勇気、そして感動を与えていただきました。高知のような小さな県からでも、頑張ればオリンピックで世界一の金メダルを取ることができるということを身をもって示していただいた。この度、新たに仮称でありますが、「県民栄誉賞」という賞を設けまして、お2人の栄誉をたたえたいという風に考えます。
第1号となる県民栄誉賞に、「2人がこれまで頑張ってきたことを形にして評価していただいて、本当にありがたいこと」と桜井監督も笑顔で話す。
パリでの記者会見では、「桜井選手から今高知で頑張っているアスリートへのエールを」というリクエストもあった。
桜井つぐみ選手:
昔は高知からオリンピックを目指せるなんて、正直遠いなって思った時もあったけど、それでも本気で目指すことをすれば絶対に夢はかなえられるなっていう風に思ったので、これを見て小さい子たちが自分の夢を目指して頑張ってくれたらうれしいなっていう風に思います。
この桜井選手のコメントについて、桜井監督は「本当にその道を歩んできたからこそ出た言葉だと思う」と語る。
桜井優史監督:
つぐみも普通の女の子で、特に運動神経とか身体能力が高かったわけではないですので、本当にいろんな思いを、いろんなことを乗り越えてこの場にいるので、すごく重たい言葉だと思います。
多くの人に感動と勇気を与えた金メダル。その影には膨大な努力があった。
(高知さんさんテレビ)
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