パリ・パラリンピックが28日(現地時間)に開幕する。県からは、奈良育英高3年、西村葵さん(18)=奈良県生駒市=が女子車いすバスケットボール日本代表に選ばれた。小学生の時に遭った交通事故が原因で車椅子を使うようになった西村さんは、動画投稿サイトで見た車いすバスケ日本代表の試合に魅せられた。夢の舞台を前に「良い守備で流れを作り、チームの勝利に貢献したい」と意気込む。
女子日本代表は、4月に大阪市であった最終予選でオーストラリアに勝利し、東京に続いて2大会連続のパラリンピック出場を決めた。西村さんも中盤に出場機会があり、味方のスコアラーがシュートを打ちやすいよう相手守備を止めるなど奮闘。試合終了の瞬間はベンチからチームメートと喜び合った。
車いすバスケは、使うボールやリング、コートのほか、基本的なルールは健常者と同じ。一方で車いすバスケ特有のルールに「持ち点」がある。選手には障害の程度に応じて重い順に1・0~4・5点がそれぞれ割り振られていて、コート上に同時に出場している選手5人の合計点は14点以内にしなければならないというものだ。
このルールにより、障害の軽い人ばかりで戦うことはできない。各選手が身体能力に応じて「持ち点に合った役割」を果たすことが重要になっている。
西村さんの持ち点は1・5点。体幹を保ちにくいこともあり、サポート役になることが多い。攻撃時には、持ち点が大きく、点を取る能力の高い選手が攻め込みやすいよう、相手守備をブロック。守備では、声を出して味方選手に死角の状況を伝え、相手選手がフリーになるのを防ぐ。座っていて振り返りづらい車いすバスケでは重要な役割だ。
体幹不足を補うため、バランスボールを使った練習も取り入れ、丁寧な車椅子さばきを心がけている。例えば、車椅子の端で相手選手と接触してしまうと体が大きく振られてしまうが、車輪の中心で受け止めると、ブレづらくなる。「当たるところが数センチ違うだけで変わる」のだという。
車椅子生活が始まったのは10歳の時だった。冬、当時通っていたバレーボールの練習への行き道で、母が運転する車に、中央線をはみ出してきた対向車が正面衝突。運転席の後ろに座っていた西村さんは体を強く打って腰椎(ようつい)を折り、下半身が動かなくなった。温度や痛みも感じない。「運動好きだったからショックだった」
気落ちしながらもリハビリに取り組む中で、作業療法士からパラスポーツの存在を聞かされネットで調べたところ、車いすバスケ日本代表の試合を見つけた。「それまで正直甘くみていた」障害者スポーツのイメージとは全く違う世界だった。想像以上のスピードで車椅子を操り、コートを走り回る選手らや迫力満点の激しい接触にすっかり魅了され、自らチームを探した。小学6年のことだった。
通い始めたのは、大阪と京都を拠点にしている「カクテル」だ。近畿唯一の女子車いすバスケチームで、入団当時から日本代表メンバーが数多く在籍。知り合いが東京パラリンピックで活躍する姿を見て、代表入りを目標に、毎週の練習に打ち込んできた。「自分が起用されるのは試合の流れを変えたい時が多い」と分析し、「持ち点の低い自分が、持ち点が高い人を抑えることができれば次の攻撃につながる。守備からチームに勢いをつけたい」と念願の舞台での活躍を誓った。
女子車いすバスケ日本代表は30日午前10時半(現地時間)から、オランダと初戦を戦う。【川畑岳志】
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