高校野球・夏の甲子園決勝(23日)
○京都国際2―1関東一(東東京)●
我慢比べの展開は意外な采配で動き出した。決勝では史上初となる延長タイブレークで繰り出した京都国際の勝負手が、初の栄冠への道を切り開いた。
両チーム無得点で迎えた延長十回。京都国際は無死一、二塁から始まるタイブレークの攻撃で、先頭打者の中崎琉生(るい)に代え、二枚看板の一人である西村一毅を代打に送った。西村はこの試合前時点で23イニング連続無失点中の2年生左腕。十回の登板に向けて肩を作っていただけに、「代打は予想していなかった。最初は意味がわからなかった」と困惑した。
先発で好投していたエースに代打を送る重い決断だったが、小牧憲継監督に迷いはなかった。「いきなり投げるよりも、代打から出した方が投げやすいかなと思った」。十回裏の登板だけでなく、小技の得意な西村の打撃にも懸けた。
小牧監督のサインはもちろん送りバントだった。しかし、西村はバントの構えを見せながら、冷静に相手の守備シフトを観察していた。
心が決まったのは、4球目だった。関東一の三塁手・高橋徹平の突っ込みが激しいとみるや、瞬時にバスターに切り替えた。高めの球にうまくバットを合わせて左前へ運んだ。無死満塁に好機が広がると、押し出し四球で1点が入った。
京都国際は、21年ぶりに本塁打ゼロで頂点に立った。反発性能を抑えた新基準バット本格導入前の昨秋から小牧監督が「低反発打線」と評するほど、打力は課題だった。その分、2人の好左腕を軸に堅守で粘り合いに持ち込み、したたかな攻めで接戦をものにするスタイルを磨いた。
グラウンドが狭い分、守備や小技、プレーの選択など細部にまでチーム作りにこだわった。選手たちは「束になって戦う姿勢や練習量はどこにも負けない」と自負する。大一番でも落ち着いてプレーした。
西村は、代打からそのままマウンドに立って優勝投手になった。投打に活躍を見せた2年生は「とても緊張した。頭が回らなくなって、目の前が真っ白になった」。この時ばかりは珍しく感情をあらわにし、両腕を突き上げた。【長宗拓弥】
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