前売り券が完売するなど熱戦が繰り広げられている第106回全国高校野球選手権大会で、入場券が転売されている。インターネット上では通常価格の約4倍で取引されているものもあり、個人取引によりトラブルも相次いでいる。横行の実態とは――。
7倍以上の値で出品
3連休の初日だった大会第4日の10日に「入場券完売通知」が今大会で初めて出て、入場券が前日までに完売する日が続いている。高校野球ファンからはSNS(ネット交流サービス)上で「甲子園行きたかったけどチケット完売」「チケット完売だったので諦めました」など、入場券を購入できずに落胆する声が目立つ。
一方で、インターネット上では通常価格よりも大幅に跳ね上がっている入場券が出回っている。三塁指定席中段は約4倍の1万6000円で売られるなど、入場券の転売が相次いでおり、中には7倍以上の値段で出品されていた入場券まであった。大会主催者は「商業利用や営利目的の転売行為は固く禁止します」と注意を呼び掛けているが、簡単には収まらないのが実態だ。
2022年から混雑緩和や熱中症対策などのため、アルプススタンドの学校応援団席以外の全席が指定席となり、インターネットで販売することが原則となった。当日券は前日までに前売り券が完売せず、残り席数に余裕がある場合に販売される。入場券は10日から3回戦の17日まで完売した。
インターネットを介したチケット販売を巡っては、高額転売を規制するため入場券不正転売禁止法が19年に施行された。違反者には1年以下の懲役か100万円以下の罰金、または両方を科すとしている。ただ、主催者によると、夏の甲子園の入場券は同法で定める特定興行入場券には該当しないという。
だまされるケースも
兵庫県迷惑防止条例は転売目的でチケットを購入する行為や転売目的で得たチケットを売買する行為などを禁止している。詐欺などの罪にも問われる可能性があるが、取り締まる側も一筋縄ではいかない。兵庫県警甲子園署は「インターネット上での売買が主流になり、取り締まりが難しくなっている」という。
摘発については大会の開催期間が短く、関連の相談も多くはないといい、「『転売のチケットを買おうとお金を払ったのに券をもらえなかった』という相談はあっても、遠方から来た人は時間がかかるのを嫌がって被害届までは出さないことが多い。お金をだまし取られるなどのトラブルに遭うこともあるので、関わらないよう注意してほしい」と話す。
入場券の個人取引では、SNS上で「甲子園のチケット譲ります」などの投稿にだまされて代金を送金すると、相手と連絡がとれなくなるトラブルも相次いでおり、兵庫県警が注意を呼び掛けている。
コロナ禍以前の姿が戻り、お盆の帰省時期とも重なって盛況が続いている夏の甲子園大会。日本高校野球連盟はホームページ上で「多くの方々に妥当な価格で観戦していただき、選手たちを応援してもらいたいと考えています」と呼び掛けている。【皆川真仁、下河辺果歩、大野航太郎】
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