【早稲田実-大社】大社の先発・馬庭=阪神甲子園球場で2024年8月17日、山崎一輝撮影

高校野球・夏の甲子園3回戦(17日)

○大社(島根)3―2早稲田実(西東京)●

 地元の人たちで埋まったアルプスの大歓声に包まれながら、白球が中前に転がった。延長十一回を一人で投げ抜いた大社の7番・馬庭優太が「打」でも輝きを放った。

 両チーム一歩も譲らず、無死一、二塁で始める延長タイブレークは十一回まできた。十一回裏は先頭の代打・安松大希がバントで三塁線ぎりぎりに転がし、内野安打に。押せ押せムードの中、無死満塁で打席に入ったのが馬庭だ。

 カウントは2ボール、1ストライク。外角高めの直球に食らい付くと、打球は二遊間を破って中前へ。熱戦に終止符を打つサヨナラ打に「今まで打ったヒットの中で一番気持ちがいい」と、歓喜に浸った。

 3年生のエース左腕として、この試合を含めて全3試合を一人で投げ抜いてきた。タイブレークにもつれた2回戦からは中1日。2回戦は115球、今回も149球を投げ、疲れは否めなかった。

【早稲田実-大社】サヨナラ勝ちで仲間と喜ぶ大社の馬庭=阪神甲子園球場で2024年8月17日、山崎一輝撮影

 元気をくれたのは、仲間の後押しだった。十一回に絶妙なバント安打を決めたのは、この夏初出場ながら自ら代打に立候補して大役を果たした2年生の安松だ。その活躍に奮い立った。「すごい、いいチームだな」。仲間のエールを受けて温かな気持ちで打席に向かった。

 だから、得意ではないという打撃でも緊張しなかった。投手らしく、相手の投手心理にも思いを巡らせた。「2ボールで相手もつらい場面。ストレートで来ると信じた」。狙い澄ました一振りで、粘る早稲田実を振り切った。

 ベンチ入りメンバー20人のうち、小学生の頃から地元で有名投手だった馬庭を含む19人が島根県内の中学出身だ。選手たちは「地元の公立校から私学を倒して甲子園に行きたい」と、1915年の第1回の地方大会から出場を続ける伝統の県立校に集った。

 馬庭は「最高のチームです。大社高校に来てよかった」と言う。学校として1大会3勝を挙げるのは初めて。地元を愛し、地元に愛された選手たちが新たな歴史を作った。【石川裕士】

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