開催中の第106回全国高校野球選手権大会で、熱中症対策は重要なテーマだ。暑い夏が続くが、出場校の選手に聞くと、紫外線対策をしているケースも意外と多い。令和の高校球児に日焼け止めの使用が広まっているのは、なぜか。「美容」以外にも理由があるようだ。
今大会で春夏通じて甲子園初勝利を挙げ、14日の2回戦では大阪桐蔭に零封勝ちするなど快進撃が続く小松大谷(石川)。メンバーの多くが自発的に練習や試合前に日焼け止めを塗り、グラウンドでプレーしているという。
橋本倖太(こうた)選手(3年)は「日焼けによって体力を消耗し、その修復のために睡眠が必要になると聞いた。日焼けを防ぎ、睡眠を日々の練習の体力回復に注ぎたい」と語る。
練習が長時間になれば、休憩時間に塗り直すこともあるというショックリー海アロン選手(2年)は「肌が弱いので赤くなって痛くなると、練習にも支障が出る。それに年を重ねるとシミになるのも嫌だし、肌はきれいな方がいいですね」と笑う。
他のチームにも愛用者はいる。北陸(福井)の小矢宙歌(そらた)主将(3年)も練習の質を高めるために今夏から手に取った。「他の強豪校が日焼け対策の講座を受けたという記事を見て、興味を持った。効果がありそうなので、自分も取り入れようと思った」と動機を語る。
鳥取城北の石黒尚主将(3年)は捕手ならではの理由を明かす。「キャッチャーはマスクをかぶるので、目元だけ赤くなってしまう。そこも少し気にしていますが、塗ると塗らないでは疲れ方が違う感じがする」
昨夏の甲子園大会でも日焼け止めは話題になった。決勝で史上初の先頭打者本塁打を放つなど慶応(神奈川)の107年ぶりの優勝に貢献した丸田湊斗(みなと)選手(現・慶大)が愛用しており、従来の高校野球選手のイメージとは異なる、日焼けしていない姿にも注目が集まった。
今大会の選手たちも美容に気を配りつつ、日焼け止めを好プレーをするためのツールの一つとして捉えているようだ。個々がSNS(ネット交流サービス)やインターネットで知識を深め、取り入れていた。
では、高校球児にとって、日焼け止めの使用は有効なのか。
運動時のパフォーマンス向上に有用
日焼けと運動時の疲労の関係性は、近年の調査で明らかになってきた部分があるという。大手化粧品メーカーの調査によると、日差しの下と屋内で同じ量の運動をした場合、日差しの下で運動した方が屋内よりも体の疲労度を表す血中の数値が高く測定された。また、日焼け止めを塗ることで体の疲労感が軽減される可能性も同様の調査で確認したという。
大手化粧品メーカーの担当者は「これまで目から入った紫外線は疲労を感じさせることが知られていたが、日焼け止めは美容目的だけでなく、運動時のパフォーマンスを高めるためにも有用だと言える」と語る。【吉川雄飛、長宗拓弥】
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