宮崎商との初戦でベンチから仲間に声援を送る中京大中京の佐古響次朗主将(右端)=阪神甲子園球場で2024年8月10日、矢頭智剛撮影

 第106回全国高校野球選手権大会に愛知県代表として出場している中京大中京。高橋源一郎監督が「自分の右腕」と全幅の信頼を置いているのが、選手としての出場を断念し、グラウンドマネジャーとしてチームを裏で支える佐古響次朗主将(3年)だ。

 10日に行われた宮崎商(宮崎)との1回戦。チームは四回に2点を先制するも六回に同点に追いつかれ、七回に逆転された。重苦しい雰囲気の中、ベンチの中で「思い切って強気でいこう!」と選手たちに声をかける佐古主将の姿があった。

 「僕が言うより佐古が言う方が説得力がある時もある。チームが同じ方向を向くのは佐古のおかげ」。高橋監督が言う通り、佐古主将のかけ声でチームは一つになり、逆転された直後の攻撃で2点を奪い、夏の甲子園100戦目を見事勝利で飾った。

 佐古主将がグラウンドマネジャーになることを決断したのは今年の春。昨夏の新チーム発足後、2人の主将のうちの1人に選ばれたが、チームは勝てない時期が続いた。

 昨秋の県大会では3回戦で敗退。今春の名古屋地区2次予選でもライバル強豪校の東邦に0―7でコールド負け。自身は当時、登録メンバーから外れ、補助員としてベンチに入っていたが「チームが勝つために自分は何ができるか」と考え、出した答えが選手を辞めて裏方に回ることだった。

 「選手を続け、活躍したかったという思いがなかったといえばうそになる。でも、それ以上に中京大中京を甲子園で日本一にするという夢が一番大切だった」。公式戦に出場するのはAチームのメンバー。佐古主将はBチームの選手だったが、Aチームがどんな状態で試合に臨んで負けたのか分からなかった。「Aチームを間近で見て支え、声を出したり、助言したりする方がチームにとってプラスになるのではないかと思った」と決断の理由を語る。

 グラウンドマネジャーはノックを打ったり、スコアを記録したりするほか、選手の体調を管理し、監督に選手の状態を伝える。

 「いろんな角度から野球を見てくれる。ミスをしたら声をかけてくれ、みんなが前向きになれる。頼りまくっている」。もう一人の主将、杉浦正悦選手(3年)はこう話し、高橋監督も「佐古のアドバイスでチームの課題が明確になる。僕の右腕です」とたたえる。

 次戦は15日、神村学園(鹿児島)との2回戦。スコアの記録員としてベンチ入りする佐古主将は「選手に助言し、チームを一つにしたい」と誓う。【塚本紘平、田原拓郎】

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