パリ・オリンピックに出場したサッカー男子日本代表。原則23歳以下の若き選手たちは1次リーグを全勝で突破し、準々決勝でスペインに敗れたものの、強豪国を相手に堂々とした戦いぶりは、将来への期待を感じさせるものだった。国内に目を向けると、次の五輪世代を目指すユース世代が炎暑の下、千葉県柏市で4日間の熱い戦いを繰り広げていた。なぜ真夏の柏に若い選手たちが集うのか、その舞台裏を取材した。
世界で活躍する選手も
熱戦の舞台は、同市内の4会場に全国の強豪16チームが集結して行われた「パワーワークカップ」。大会は2021年に8チーム参加で始まり、翌年の第2回大会から16チームに倍増、今回で4回目となる。現在ドイツ1部・ボルシアMGで活躍する福田師王選手(20)が22年の大会に神村学園高のFWとして出場するなど、若手選手の活躍の場となっている。
今大会は8月1日から3日の3日間、各4チームが4会場で予選リーグを実施、勝ち点などで順位を決め、上位の2チームが4日の決勝を戦う形式で行われた。最後に勝ち残ったのは、いずれも地元・柏の柏レイソルユースと日体大柏高。決勝会場には今年初めて、J1柏レイソルのホーム・三協フロンテア柏スタジアムが選ばれており、両チームの選手は憧れの舞台での対決に、試合前からモチベーションが上がっていた。
決勝は前半、両者譲らぬ攻防で0―0で折り返すと、後半32分、柏レイソルユースの越川翔矢選手(17)が味方のシュートのこぼれ球を押し込み先制。38分には黒沢偲道(しどう)選手(17)がミドルシュートで追加点を決め、同チームが2―0で2連覇を果たした。大会MVPに選ばれた黒沢選手は「一つ一つの大会で結果を残すことが大事。決勝戦で点を取って勝利に貢献することができて、とてもうれしい」と歓喜。「来年は3連覇がかかっているので頑張ってほしい」と後輩たちにもエールを送った。
夏の舞台導いた地元の縁
大会が始まるきっかけとなったのは、地元・柏の人々の縁だった。大会名となっている「パワーワーク」は、地元企業「ウイナーズ」(同県松戸市)が運営する建設業界向けを中心とした求人情報サイトの名前だ。00年にJ1柏の応援団長を務めた渡辺礼さん(50)が、同チームで活躍した酒井直樹さん(49)と親交があり、17年から日体大柏高のサッカー部監督を務めていた酒井さんにウイナーズを紹介。同社はスポンサーとしてサッカー部を支援することになった。
その後の20年、新型コロナウイルスの大流行で事態が大きく動き出す。コロナ禍で従来行っていた海外遠征がかなわなくなり、有力選手の育成機会が減ったことに悩んでいた酒井さんは、知己の渡辺さんやウイナーズ社と、代わりになる強化方法について知恵を出し合った。その中で生まれたのが「自分たちで大会を作って強豪チームを招き、選手たちに切磋琢磨(せっさたくま)してもらえばいい」というアイデアだった。
ウイナーズには、スポンサーとして若いアスリートを支援することを通じて、若者たちに建設業界をもっと身近に感じてもらい、業界を盛り上げたいという思いがあった。早速、建設業界にも協力を呼びかけたところ、多くの企業の賛同と大会運営費などの協力を得られ、21年7月に「パワーワーク トラスト サッカーフェスティバル」として実現した。大会は翌22年から「パワーワークカップ」と改名され、地元のユース世代と全国の強豪校・ユースチームが交流し、強化を図る機会となっている。
酒井さんは「この夏の時期は、シーズンの下半期へ向けての重要な調整期間。当時、日体大柏のスポンサーになっていただいただけでなく、チャレンジの場として大会まで開催してくれたウイナーズさんに、非常に感謝している」と当時を振り返る。
「若者のために」という情熱から生まれたパワーワークカップ。ウイナーズの兵頭茂樹社長(51)は「今大会は各都道府県の専門工事業界トップ10の企業から『パワーワークトップ10』として特別協賛していただいた。大会を通じ、未来へ進む若者を少しでも支援できれば、サッカー界の発展や建設業のイメージアップに貢献できると思う」と意義を語る。大会を通じて、サッカー界の「金の卵」が新たに生まれることに期待したい。【榎良広】
今大会の出場チーム
・日体大柏高(千葉)
・柏レイソルユース(千葉)
・長崎総科大付高(長崎)
・大産大付高(大阪)
・近大付高(大阪)
・浦和レッズユース(埼玉)
・上越高(新潟)
・就実高(岡山)
・新潟明訓高(新潟)
・香川西高(香川)
・町田ゼルビアユース(東京)
・九州国際大付高(福岡)
・聖和学園高(宮城)
・山形明正高(山形)
・南葛SCユース(東京)
・日大藤沢高(神奈川)
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