夏の甲子園に初出場する栃木県立の石橋は、一つの合言葉を掲げて厳しい練習を乗り越え、私学の強豪相手に勝ち抜いてきた。「実力で甲子園へ行こう」。21世紀枠に選ばれ、春夏通じて初めて甲子園の土を踏んだ昨年のセンバツ。その経験が、公立校としては19年ぶりに栃木大会を制する躍進の原動力となった。
「実力で甲子園へ行こう」
今の3年生が2022年に入学した当時、石橋は夏の最高成績が栃木大会4強だった。県内は作新学院や国学院栃木などの強豪がひしめき、壁は厚い。
石橋は地域貢献と文武両道に取り組み、23年春のセンバツに21世紀枠で選出された。前年の秋季県大会は準決勝で敗退していたが、選手や地域の小学生らのけが防止に努めるなどの試みが評価された。過去にも2度最終選考まで残り、3度目での吉報だった。
初めて挑んだ甲子園では、初戦で能代松陽(秋田)に0―3で敗退。原佑太選手(3年)は「歴代の先輩の積み重ねのお陰で選ばれたのに、初戦で負けてしまった。次は自分たちの力で学校を連れて行きたいと思えた」。遠すぎる目標だった聖地に出場できた経験が選手たちの意識を変え、自然と「実力で甲子園へ行こう」が合言葉になった。
全国のレベルに触れたことも大きな刺激になった。能代松陽戦では守りが踏ん張り、七回までは1点差の接戦を演じた。同じ県立高である相手の戦いぶりに、田口皐月主将(3年)は「実際に試合をして全国レベルの強さがわかった。公立校でも全国の舞台で渡り合えると感じた」。
私学の強豪に打ち勝ち
現在の3年生は7人がベンチ入りし、3人が先発出場して甲子園を経験した。先発マスクをかぶった山下諒太捕手(3年)は「グラウンドに立って、甲子園の歴史を実感した。もっと練習して戻ってきたいと思う場所だった」と振り返る。センバツ後は甲子園出場クラスの投手を意識した打撃練習で、打力の底上げを図ってきた。
迎えた3年生にとって最後の栃木大会。強豪校の好投手たちにも打線が食らい付き、トーナメントを駆け上がった。接戦が続き苦しい場面もあったが、ベンチでは合言葉で互いを鼓舞した。決勝では国学院栃木から9点を奪って逆転勝ち。田口主将は「実力で甲子園へ行こうと全員が言い続けてきたから、夢が実現した」と涙を流した。
福田博之監督は「あの時、センバツで石橋を選んで良かったと皆さんに思ってもらえるような姿を見せたい」と意気込む。磨いてきた実力を甲子園でも発揮して、悲願の初勝利を目指す。【池田一生】
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