パリ・オリンピック第15日は9日、卓球男子団体3位決定戦が行われ、日本は開催国のフランスに敗れて3大会連続のメダル獲得はならなかった。
また、これか……
地元フランスの観客が狂喜乱舞する中、日本の選手たちは落ち着いた様子で互いをねぎらっていた。
「もちろんメダルを取れなかったことは悔しい。ただ、最後の篠塚(大登)も格上に果敢に立ち向かって『もしかしたら』と思わせてくれた。すっきりしている」。
張本智和の表情は、つきものが落ちたようだった。
「あと1点」から大逆転負けを喫した準決勝のスウェーデン戦から中1日。完全に気持ちを切り替えられていたわけではない。だが、「残っているのは銅メダル。取るしかない」。その思いだけは、3人ともが強く持っていた。
第1試合のダブルスを落とし、第2試合は張本とシングルスで銅メダルを獲得したフェリックス・ルブランのエース対決となった。激しい打ち合い、高い技術の応酬は2―2で迎えた最終第5ゲーム、先に張本がマッチポイントを握った。
だが、10―7からまさかの連続5失点。消極的になったところをルブランに逃さず仕掛けられ、逆転で試合を落とした。「また、これか……」。思わず、苦笑いが浮かんだ。
第3、4試合は戸上隼輔と張本が勝利したが、第5試合は篠塚がルブランに力負け。結果的に、あと1点まで追い詰めた第2試合のエース対決を落としたことが勝敗に大きく響いた。
人気、実力とも女子が先行する中で、男子は2016年リオデジャネイロ五輪で水谷隼さんが男女通じて初めてシングルスでメダルを獲得するなど存在感を示してきた。その水谷さんが引退し、若返ったチームは3大会ぶりにメダルを失った。
エースの座を受け継いだ張本は、大会を通じてあと1点が遠かった。
「技術か、戦術か、メンタルか……。どこかは分からないが、絶対に自分に何かしらの問題がある」と責任をかみしめた。一方で、まだ21歳の若きエースが背負うものが重かったのも事実だ。
男子の田勢邦史(たせいくにひと)監督は勝ちきれなかった要因に「大舞台での経験の欠如」を挙げたが、この3人がまたそろって五輪の舞台に戻ってくるとは限らない。今回のように五輪を知る選手が1人や、ともするとゼロになる可能性もある。
同じ失敗を繰り返さないように。この経験と悔しさを男子チーム全体で共有し、受け継いでいくことが、メダル奪還に向けての第一歩となる。【パリ玉井滉大】
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