【菰野-南陽工】四回裏南陽工1死一塁、打者・長嶺の時、伊藤が二盗を試みるがタッチアウト(野手・加瀬)=阪神甲子園球場で2024年8月9日、渡部直樹撮影

高校野球・夏の甲子園1回戦(9日)

○菰野(三重)6―2南陽工(山口)●

 春夏通じて初の甲子園勝利をたぐり寄せたのは、扇の要の肩だった。菰野は捕手の栗本賢佑選手が5回仕掛けられた盗塁のうち四つを阻止し、南陽工の反撃の芽を摘んだ。2安打とバットでも存在感を放ち、スタメン全員が2年生のチームをけん引した。

 最初の見せ場は3点リードで迎えた四回1死一塁だ。2球目に一塁走者がスタートを切ったが、「誰にも負けない自信がある」と自慢の肩で盗塁を阻止した。その後もノーサインで積極的に盗塁を試みる南陽工に対し「機動力でかき回してくるのは分かっていた」。圧巻は六回だ。1死から安打と四球で許した一塁走者を連続で阻止。八回には三盗も防いだ。

 実は捕手歴は、まだ半年という。もともとは三塁手で昨夏はメンバー外だったが、遠投100メートルの強肩を生かして2月に捕手に転向した。2失点で完投したエースの栄田人逢(とあ)投手も「ランナーは基本的に捕手に任せれば何とかなると思っている」と絶大な信頼を口にする。

 チームは三重大会直前に前監督が「不適切指導」で退任し、森田亮太監督が部長から急きょ就任した。三重大会を制し、これまで夏は2回、春のセンバツは1回の出場がありながら屈してきた初戦の壁をついに乗り越えた。

 歴史的な甲子園1勝を挙げたが、選手はいたって冷静に受け止める。野田親之介選手は「練習を手伝ってくれた3年生に恩返しするためにも、先を見ずに一戦必勝で戦いたい」。どこまでも心強い2年生である。【皆川真仁】

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