高校野球・夏の甲子園1回戦(9日)
○新潟産大付2―1花咲徳栄(埼玉)●
超高校級の選手もいなければ、スラッガーもいない。新潟産大付は優勝経験のある花咲徳栄を相手に投手の傾向を見抜き、見事に実践してみせた。
花咲徳栄のエース・上原堆我(たいが)投手は、最速148キロの直球をテンポ良く投げ込む速球派。新潟産大付の吉野公浩監督は一回の投球をみて、相手バッテリーが外角中心になっていることに気づいた。「(真っすぐに)張って、踏み込んで打ちにいくしかない」と選手に伝えたという。
ハイライトは同点の七回だった。先頭の戸嶋翔人選手が外角高めにきた初球の直球を踏み込んで逆方向に流し打ち、右前打で出塁した。その後に1死二塁となり、打席に入った3番・高橋海向(かなた)選手は外の直球を無理に引っ張らず、二ゴロできっちり三塁に走者を進めて4番に回した。
打席に入ったのは、前の打席で安打を放っている多田大樹選手。直球にめっぽう強い打者だ。初球の外角ぎりぎりを突いた直球を見逃した後の2球目。今度はやや内寄りに甘くきた140キロ超の直球に「体が反応した」。引っ張った打球はしぶとく三遊間を抜け、ついに勝ち越した。
七回は、花咲徳栄の上原投手の球数が100球を超えたところだった。「追い込んでも本塁ぎりぎりに立たれて、食らいつかれた。後半は内角中心に狙いを変えたが(勝ち越された場面は)相手が上だった」。花咲徳栄バッテリーは配球を外角から内角に変えたが、それでも多田選手はコースに逆らわずにうまく対応してみせ、「(打球が)抜けたと思って、打った瞬間ガッツポーズしちゃいました」と笑みがはじけた。
新潟県勢の初戦突破は、2017年の第99回大会に日本文理が鳴門渦潮(徳島)に勝って以来、7年ぶりだ。甲子園での勝利がしばらく遠ざかっていただけに、抽選会で花咲徳栄が1回戦の相手に決まり「抽選の時は0―20で負けるんじゃないかと思った」と振り返る。
それでも吉野監督のプランは明確だった。それをボクシングに例えて明かした。「まずはガードを固めてジャブとボディーで相手の出足を止める。スタミナを奪って最後はストレートで勝ちきる」。まさにそんな展開だった。試合後に「夢の中にいるのかな」と目をうるませた吉野監督。甲子園での勝利数が春夏通じて全国で最も少ない新潟県だけに、意地をみた。【吉川雄飛】
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