第105回全国高校野球選手権記念大会、慶応との3回戦で中前打を放つ広陵の真鍋慧選手=阪神甲子園球場で2023年8月16日、滝川大貴撮影
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 持ち前の長打力から米大リーグで歴代最多の通算762本塁打を放った左の強打者バリー・ボンズさんにちなみ「広陵のボンズ」と評された。広島・広陵で春夏3度甲子園に出場し、高校通算62本塁打をマークした真鍋慧(けいた)選手(大阪商業大1年)。大阪桐蔭のエース左腕・前田悠伍投手(ソフトバンク)、花巻東(岩手)の佐々木麟太郎選手(米スタンフォード大)、九州国際大付(福岡)の佐倉俠史朗選手(ソフトバンク育成)と並んで注目された。しかし最後の夏、甲子園での最終打席はまさかの「バント失敗」だった。スラッガーとして聖地に立った心境を聞いた。

 ――「甲子園デビュー」は2年春のセンバツの敦賀気比(福井)との1回戦。「4番・一塁」で先発し、4打数3安打1打点の活躍でした。初めて甲子園でプレーした時のことを覚えていますか。

 ◆あんまり覚えてないですね……。でも、やっぱり緊張はしました。とても緊張したわけではないですけど、それは覚えています。

 ――甲子園を春夏通算3度経験して真っ先に思い浮かぶ景色はありますか。

 ◆やっぱり(3年夏の3回戦の)慶応(神奈川)戦です。(延長十回タイブレークの末に)接戦で負けてしまったんですけど、点の取り合い、シーソーゲームができたので、高校野球人生で一番いい試合だったかな、と思います。

 ――真鍋選手の最終打席で甲子園にどよめきが起きました。同点で迎えた九回裏無死一塁でバントを試み、打球は三塁前への小フライとなって失敗に終わりました。

広陵時代を振り返る大商大・真鍋慧選手=奈良県香芝市で2024年5月11日午後2時9分、吉川雄飛撮影
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 ◆(打つか送るかの判断は)どっちでもいいみたいな感じだったんですけど、自分の判断でやりました。

 ――試合後、中井哲之監督は「僕の中途半端な指示があんな結果になった」と悔いていました。一方で、「真鍋のチームじゃなくて、広陵高校野球部なので当然といえば当然のことです」とも。当時のことを思い返しますか。

 ◆その日、自分が打っていなかったというのもありますし、後ろの小林(隼翔選手)が当たっていたので、バントに決めました。チームが負けたのは悔しいですけど……。でも、後悔はしてないです。一生懸命プレーした結果ですし、常に全力でプレーするのは当たり前のことなので。

 ――高校野球を終え、プロ志望届を出すもドラフト指名はかないませんでした。ドラフト3位までに指名されなければ大学に進むという「順位縛り」も話題となりましたが、どんな気持ちだったのでしょうか。

 ◆志望届を出すと決めたのは、3年の春ですね。春の大会……いや、甲子園(センバツ)が終わったぐらいかな。特にこれというきっかけは無かったんです。(順位縛りは)自分から言ったんだと思います。上位で(プロに)入った方が、それだけ評価してくれているということなので。(指名漏れは)ずっと心の中には置いてますし、忘れないようにしています。もう本当に頑張るしかないですし、今は頑張ることしか考えていないです。

 ――その後、中井監督の母校である大商大に進学しました。監督はどんな存在でしたか。

 ◆とても人間として成長させてもらいましたし、男らしいというか、そういう先生だったと思います。「親には感謝しろ」ってずっと言われてきました。寮生活でも、今の1人暮らしでも親のありがたみがすごく分かるので、それは忘れないようにしています。

 ――今夏の甲子園は一部日程で昼間の時間帯を避けた午前中と夕方に試合を行う「2部制」が導入され、暑さ対策が進みます。甲子園の暑さについてはどう感じていましたか。

 ◆どこも暑いのでそんなに変わらなかったですけど、熱気はありましたね。応援の熱気で、1試合にかけている熱さみたいなものは気温以上にあったと思います。夏は特にそう感じました。

 ――高校野球の経験が今に生きていることはありますか。球児にエールをお願いします。

 ◆一球の重さっていうのは高校野球で学んだことなので、そこは大学野球に生きているかなと思います。悔いが残らないように、全力で一生懸命にプレーしてほしいと思います。【聞き手・吉川雄飛】

まなべ・けいた

 2005年6月17日生まれ。広島市出身。小学1年から兄の影響でソフトボールを始めた。広陵では甲子園に春夏3度出場。秋の明治神宮大会では2年連続で準優勝した。大商大でも1年から主力に定着し、5季連続のリーグ優勝に貢献。指名打者のリーグベストナインにも選ばれた。身長190センチ、体重100キロ。

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