開会式で先導役を務める穴水高校の東野魁仁さん=阪神甲子園球場で2024年8月7日、矢頭智剛撮影

 一度、望みが絶たれた甲子園球場で、地元の復興への思いを胸にグラウンドに立った。7日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕した第106回全国高校野球選手権大会。開会式の入場行進で、先導役に選ばれた石川県穴水町の穴水高3年の野球部主将、東野魁仁(かいし)さん(17)は「能登地区の皆さんに元気と勇気を与えられるような行進ができたかなと思う」と語った。

 午前8時半。青空の下、球場グラウンドへ先頭で入場してきた東野さん。スタンドから多くの観客が見守る中、全国から集まった代表49チームを率いて、堂々と先導した。

 東野さんは、元日に石川県で発生した能登半島地震で被災した。地震当時は被害が少なかった金沢市にいたが、地元の穴水町は震度6強を観測。5日後、自宅へ戻ると戸は外れ、壁ははがれ落ち全壊していた。グラウンドにも、ひびが入り、とても野球ができる状況ではなかった。

 「野球がしたい」。仲間とベースの距離を測ってグラウンドを作り、チームで練習できないときは体作りを中心に自主練習に励んだ。

 地震当時は部員4人だったが、今春には新入生が加わり計10人に。石川大会には、2年ぶりに単独校として出場し、エースで3番打者として2点適時三塁打を放つ活躍をしたが1回戦で敗退。石川県代表は小松大谷に決まった。夏の甲子園は終わったと思われたが、後日、監督から先導役の話を聞いた。「うれしかったが自分で良かったのか」と当時の心境を語った。

 開会式で先導の任を果たした東野さんはこう言った。「先導で歩くのはとても気持ちが良かった。能登に帰って、甲子園は楽しかったと伝えたい」【大坪菜々美、野原寛史】

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