体操男子種目別平行棒決勝、岡慎之助の演技=ベルシー・アリーナで2024年8月5日、玉城達郎撮影
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パリ・オリンピック 体操男子種目別鉄棒 決勝(5日、ベルシー・アリーナ)

岡慎之助選手(20)=徳洲会 金メダル

 アリーナを埋めた大観衆が息をのんで見守る。バーから手を離し、空中に飛び出した岡慎之助は複雑に体をひねった。会場中に響く「ドンッ」という衝撃音とともに、白い粉が舞う。寸分の狂いもなく地上に降り立ち、堂々と手を広げた。

 今大会の体操男子、最後の種目となった種目別鉄棒。8人中2番目に演技した岡は14・533点をマークして、この時点でトップに立った。後に続く高難度の技を持つ難敵たちはミスが相次いで得点を伸ばせず、気付けば最後まで1位の座を守り続けた。

 演技の出来栄えを示すEスコアは唯一の8点台。パリの主役となった岡に有終の美をもたらしたのも、こだわり続けた「美しさ」だった。

体操男子種目別鉄棒決勝、岡慎之助の演技=ベルシー・アリーナで2024年8月5日、玉城達郎撮影
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 この日は鉄棒の前にあった種目別平行棒でも銅メダルを獲得。個人総合、団体総合と合わせて金メダル三つの「3冠」を達成し、計4個のメダルを手にした。1大会3冠は1972年ミュンヘン大会の加藤沢男さん以来52年ぶり。長く日本のエースとして活躍してきた内村航平さんですらなし得なかった快挙だ。

 シニアの国際大会では、これまで目立った成績がなかった。決して高難度の大技を連発するわけではない。だが、細部にこだわった演技は世界の体操関係者を驚かせた。

 7月29日、団体決勝で最初の金メダルを手にして表彰台に上がった時、どこか恥ずかしそうな笑顔で歓声に応えていた。しかし、3冠達成の表彰台では、自信に満ちた表情で金メダルを手にした。「本当に最後何が起こるか分からない。ミスなくやりきれたことが、この金メダルにつながった」

 高校1年で出場した世界ジュニア選手権で個人総合を制覇し、「日本の宝」と期待された。パリ五輪という大舞台を経て、「世界の宝」にまで成長を遂げた。【パリ角田直哉】

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