パリ五輪・ボクシング女子75キロ級の準々決勝で勝利し、メダル獲得が確定した難民選手団のサンディウィヌ・ジャンクーヌガンバ選手=パリ北アリーナで2024年8月4日、ロイター

 パリ・オリンピックのボクシング女子75キロ級で4日、難民選手団でカメルーン出身のサンディウィヌ・ジャンクーヌガンバ選手(25)が準々決勝で勝利した。3位決定戦がないため、メダル獲得が確定した。2016年リオデジャネイロ五輪で結成された難民選手団がメダルを獲得するのは、史上初めてとなる。

 会場の雰囲気は「アウェー」だった。

 対戦相手は地元フランスのミシェル・ダビナ選手。スタンドにはフランス国旗があふれ、何度もダビナ選手に向けて声援が飛んだ。だが、そんな空気にのまれず「コーチや自分自身に耳をかたむけた」。序盤から果敢に攻め込み、試合の主導権を握って勝利した。

 ジャンクーヌガンバ選手はカメルーンで生まれ、11歳の時に家族とともに英国へ移住した。

 母国では「活発な子」だった。

 しかし、英語がうまく話せずに学校でいじめにあい、内気になった。そんな中、15歳でボクシングを始めると、少しずつ才能が開花した。

 「ボクシングを通じて、何かをやりとげたり、自分を信じたりできるようになった」

 18歳の時、同性愛者であることをカミングアウトした。母国カメルーンでは、同性愛は「犯罪」だ。移住先の英国で過ごす以外に道はない。そのため、2021年に難民申請が認められた。

 難民選手団はリオ五輪で初めて結成され、10人が参加。21年の東京五輪では29人に増えた。パリ五輪では最多の37人が出場している。

 選手村では、滞在施設のエレベーターにメンバーの試合予定を張り出しており、ジャンクーヌガンバ選手は毎朝、それを見ながら全員の健闘を祈るという。「勝ち負けは関係ない。重要なのは自分を信じること、自分を駆り立てることだ」

 パリで「平和の祭典」が続く中でも、世界では紛争が絶えない。故郷を追われ、国内外に逃れた難民はすでに約1億2000万人に上る。その全員に向け、ジャンクーヌガンバ選手はこう呼びかけた。

 「自分を信じて進み続けるんだ。心に思っていることは何でもできる」【パリ金子淳】

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