柔道女子48キロ級で金メダルを獲得し、同階級の他のメダリストと笑顔を見せる角田夏実(左から2人目)=シャンドマルス・アリーナで2024年7月27日、平川義之撮影
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 金メダルの「価値」は、およそ15万円――。

 パリ・オリンピックで熱戦が繰り広げられるさなか、英シンクタンクのオックスフォード・エコノミクスがそんなブログ記事を公開した。銀メダルは7万8000円だという。

 記事は、金銀銅メダルに使われている貴金属を、市場価格に置き換えて算出したものだ。アスリートの努力は一切勘案されていない。

 メダルの真の価値がそこにないことは知りつつ記事を見ると、銅メダルの価値は、ちょっと目を疑うような数字でもあった。

金、銀メダルはほぼ「純銀製」

 五輪のメダルが何で作られるか。五輪憲章には、素材の純度や分量について取り決めがある。

 大会組織委員会や海外メディアによると、パリ大会では金・銀・銅メダルのいずれにも、パリを象徴する観光名所エッフェル塔の一部だった鉄片が中央にあしらわれている。

東京オリンピックのメダル表面のデザイン=東京都中央区で2019年7月22日、小川昌宏撮影
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 そのうえで金メダルは重さが529グラム。95%以上の505グラムが銀で、表面を6グラムの金でコーティングしている。

 銀メダル(525グラム)には507グラムの純銀が含まれ、銅メダル(455グラム)は銅415グラムのほかに亜鉛が含まれているという。

 こうした構成を元に、オックスフォード・エコノミクスが試算したところ、金メダルは1027ドル、銀メダルは535ドル。そして銅メダルは……なんと4・6ドル(約670円)だった。

 日本では、吉野家の牛丼(大盛り)の値段が696円(税込み)だ。

 記事では、18グラムが使われたエッフェル塔の鉄片は「プライスレス」(値が付けられないほど貴重)として、それ以外の部分で価値を推定している。

 「貴金属や工業用金属の市場は好調であり、これらのメダルの価格は将来的に大幅に上昇する」とあるが、銅の金属としての価値は金や銀に比べて圧倒的に低い。今後も銅メダルの安さは変わらないだろう。

 もっとも、メダルの価値がその材質にあるわけではないことは、誰もが知っている。

 卓球女子の早田ひな選手は3日、利き腕を痛めながらシングルスの3位決定戦を制し、勝利の瞬間に泣き崩れた。

 目を真っ赤にして語ったのは「この銅メダルは、金メダルよりも価値がある」だった。

過去の取引例は…

 ちなみに、五輪のメダルが商取引の場で売りに出された例は過去に何度かある。

 最近では2021年の東京大会だ。

 空手男子組手75キロ級で銅メダルを獲得したウクライナのスタニスラフ・ホルナ選手は22年、メダルを競売にかけた。

 五輪専門メディア「インサイド・ザ・ゲームズ」によると、ロシアによる侵攻が続く中、ウクライナ軍や避難民を支援するためだった。

 この時の落札価格は2万500ドル(約300万円)。落札者は日本人の男性で、後にメダルを返却する意向を示したという。

 また、1968年メキシコ五輪の陸上男子走り幅跳びで8メートル90の世界新記録(当時)を樹立した米国のボブ・ビーモン氏は24年、その時の金メダルを44万1000ドル(約6500万円)で売却した。ビーモン氏の記録は、五輪記録としては現在も破られていない。

 メダルはやはり競売で落札された。

 ビーモン氏は「メダルを披露し、記録を後世に伝えるにはもってこいだ」と話したという。【千脇康平、高橋由衣】

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