柔道混合団体の表彰式で銀メダルを手に笑顔を見せる日本代表の阿部一二三、阿部詩の兄妹=シャンドマルス・アリーナで2024年8月3日、平川義之撮影

 3日に行われた、パリ・オリンピックの柔道混合団体決勝。柔道女子52キロ級代表の阿部詩選手(24)は観客席から、日本の優勝を信じて、祈るように見つめていた。フランスに敗れたが、男子66キロ級で2連覇を果たした兄の一二三選手(26)=ともにパーク24=が、1階級上の相手に真っ向勝負を挑む姿を目に焼き付けた。

 詩選手にとって、今大会の7日間は「自分の人生の中で忘れられない経験」だった。五輪2連覇を期待されながら7月28日の個人戦は2回戦で敗れ、試合直後は立ち上がれないほど泣きじゃくった。テレビに映し出された号泣する姿を巡り、ネット交流サービス(SNS)では、応援の言葉とともにいわれのない中傷も飛び交った。詩選手は中傷との関連は明記していないが、30日に自身のインスタグラムで「情けない姿を見せてしまい申し訳ありませんでした」と投稿した。

 アスリートへの中傷は最近ますます過激になっており、今大会も対象は詩選手だけにとどまらない。日本オリンピック委員会(JOC)は1日、行き過ぎた内容には法的措置も辞さないとする異例の声明を出す事態に至った。

 個人戦から6日。詩選手はスペインとの初戦(2回戦)で再び畳に立った。前半の劣勢から盛り返し、試合終了1秒前に鮮やかな背負い投げ。復活を印象づける勝利を飾った。「ここで一歩下がってしまうと今後の柔道人生につながらないと思った」。試合後、葛藤がありながら出場に踏み切った決意を明かした。

 次回2028年はロサンゼルス五輪。「オリンピックの舞台で必ずリベンジしないといけないと思っている」と詩選手の言葉にも力強さが戻ってきた。思い描くのは再び兄とともに一番輝くメダルをかける姿だ。【パリ岩壁峻】

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