成田ユナイテッドの代表を務める武田純一さん(左)=7日、君津市大和田(松崎翼撮影)

千葉県成田市を拠点に活動する社会人サッカーチーム「成田ユナイテッド」が、Jリーグ昇格を目標に掲げて挑戦を続けている。選手としての給料はゼロ。それでも、勝利への執念やサッカーへの情熱はJ1のクラブと変わらない。サッカーを続けたい若者らの受け皿となることに加え、子供たちへの指導などを通じて地域を盛り上げる取り組みも続けている。

成田ユナイテッドは、地元出身の武田純一さん(48)が前身のチームを引き継ぐ形で、平成29年に誕生した。「元々は草サッカーに毛が生えたレベルだった」(武田さん)が、勝てるチームづくりをしようと、クラブ運営法人を設立し、選手やスポンサー集めに奔走した。

現在はJ1から数えて7部相当の県1部リーグで戦う。これまでの最高順位は3位。2位以内に入れば、1つ上のカテゴリーである関東2部リーグの昇格をかけた入れ替え戦に進むことができる。

所属選手は約20人。選手としての給料はなく、それぞれが働きながらサッカーと向き合う。練習は仕事前の朝に週4回で、試合もこなす。社会人リーグでは、かなりの練習量だが、今後は夜間のさらなる練習も検討しているという。現在は5月のリーグ戦開幕に向けて汗を流している。

4月7日には、トーナメント方式のカップ戦で、昨年1部リーグ優勝を果たした市川市を拠点とするチームと対戦。昨年1-11で大敗を喫した強豪相手に、4-2で逆転勝利を収めた。オーストラリアのプロチームの経験もある高橋譜匠(つぐなる)選手(30)は「それぞれが120%の力を出してくれて勝利につながった」と笑顔を見せた。

ポジショニングや相手へのプレッシャーのかけ方など、前日からチーム全員で話し合って試合に臨んだという。試合中も密にコミュニケーションをとった。ハーフタイム中には、新地寿史兆(としき)選手が(30)が、汗だくになりながらホワイトボードを使って若手選手たちと後半戦の戦略を練った。「1つのアドバイスで試合の流れが変わったりする。自分はがむしゃらに走るより、経験を伝えることが求められている」。

新地選手がチームに加わった2部時代の5年ほど前とは、選手たちの意識も大きく変化したという。「かつては遅刻も当たり前のようなチームだったが、今はサッカーを中心に考える選手が多く、みんなが同じ方向を向けている。お金ではなく、勝つためにやっている」。

地域貢献にも積極的に取り組んできた。昨年からは小学生を無料で招待して本格的なサッカーを教える教室を定期的に開催している。新地選手は「現状、試合を見に来てくれる人は少なく、スポンサーへの経済的な貢献は難しい。今はスポーツを通してとにかく地域を盛り上げたい」と話す。

クラブでは、中学生年代に当たるジュニアユースチームも育成。現在は地元の子供たち70人ほどが技術を磨く。トップチームの選手も指導に加わり、将来的には、成田市から世界に羽ばたくような選手の輩出を目指している。

武田さんは「Jリーグを目指しながら、地元の人たちみんなが応援してくれるようなチームづくりをして地域を活性化させたい。上のカテゴリーに上がって活動を支えてくれるスポンサーや成田市に恩返ししたい」と力を込めた。(松崎翼)

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