パリ・オリンピックの選手村。経費削減で、入村式は行われなかった=パリ郊外で2024年7月18日午後3時21分、和田大典撮影

 エッフェル塔(ビーチバレー)やベルサイユ宮殿(馬術など)と、世界的観光名所も舞台に26日に開幕するパリ・オリンピック。華やかな印象とは対照的に、大会運営は「質素」という言葉が似合う。五輪ではおなじみだった、あのセレモニーも廃止に。節約の徹底ぶりに驚く関係者もいる。

 パリ近郊のシャルル・ドゴール空港には18日、50人以上の日本選手団が到着し、うち約45人がこの日オープンした選手村に入った。「(大会までに)最高の準備をしていきたい。有観客の五輪がとても楽しみ」。入村を前に、ボクシング男子71キロ級の岡沢セオン選手(INSPA)は気持ちを高ぶらせていた。

 一方で、岡沢選手は「まだ空港の中なので、『フランスだ!』って感じはしていないです」とも語っていた。実は空港での取材対応は、「日本勢の入村第1陣」という名目で開かれた。パリ五輪では、これまでの五輪で行われていた選手村の入村式を廃止したからだ。日本オリンピック委員会(JOC)は急きょの対応として、岡沢選手らの「入村取材」を空港で実施した。

パリ・オリンピック選手村に入るのを前に、取材に応じたボクシングの岡沢セオン選手。パリ五輪では入村式が廃止されたため、空港で「入村」取材が行われた=パリ近郊のシャルル・ドゴール空港で2024年7月18日、岩壁峻撮影

 前回の東京五輪は新型コロナウイルスの感染防止対策の一環で取りやめになったが、これまでの大会では開催国の文化にちなんだ音楽やダンスが披露される入村式は恒例行事だった。パリ五輪組織委員会によると、入村式廃止は経費削減を目的に国際オリンピック委員会(IOC)が2018年に策定した「ニューノーム(新しい規範)」に基づく。

 ニューノームでは会場の縮小や輸送手段の見直し、既存のインフラの最適化(有効活用)も提唱していたが、入村式についても「必要性を再考する」としていた。策定当初の18年の資料では「すでに入村している選手から(式が)騒がしいとの不満があった」との記述もあった。

 「無駄とまでは思わないが、ここまで省略するとは……」。入村式廃止を目の当たりにした日本の競技関係者からは、驚きにも似た声が漏れる。

 東京五輪では入村式こそ取りやめになったが、選手村の村長として元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏が任務をこなした。パリ五輪には村長も置かない。なお、パリ五輪選手村の村長室と当初想定されたスペースは子育て中のアスリート用の託児所として改装されているという。

 経費削減もさることながら、パリ五輪は持続可能な大会をうたう。競技会場のうち95%で既存施設または仮設競技場を活用。さらに二酸化炭素排出量削減のためにディーゼル発電機への依存もなくし、すべての競技場が電力網で接続される。

 さらに組織委は「メディア側も大会のエコシステムで役割を果たすよう求める」とし、これまでの五輪でおなじみだったメディア用の取材キット(専用のバッグや大会情報が記載されたハンドブック)の配布をやめた。

 花の都では、その名と裏腹の地道な取り組みが続けられ、これまでの「当たり前」に疑問が投げかけられている。【パリ岩壁峻】

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