第95回都市対抗野球大会に2年ぶり17回目の出場をする東邦ガス(名古屋市)では、とにかく明るいベテランが、打撃と声でチームを引っ張っている。
入社9年目となる若林俊充選手(31)。彼には常に意識していることがある。「とにかく明るく振る舞う」。この境地に至る過程には若手時代の挫折があった。
東京出身で強打が持ち味。日体大4年の春、秋のリーグ戦ではベストナインに輝き、東邦ガスで1年目から4番を任された。
だが、現実は甘くなかった。強豪チームがひしめく東海地区はレベルが高い投手がそろう。キレのある変化球や高い制球力に苦戦し、打てない時期が続いた。
転機は3年目に訪れる。それは山田勝司前監督からかけられた言葉だった。
「4番なんだから打っても打てなくても堂々としてろ」
はっとした。その時からだ。凡退し、落ち込んでも周りにそれを悟られないように心がけた。続けるうちに打撃の調子の波が消えた。
キャリアを重ね、ベテランと呼ばれるようになった。入部してくる若手にかつての自分を重ね合わせる。打てなかった時は、先輩からの「もう一回若林に回そう」という声かけで、前を向くことができた。
だから、今度は自分の番だ。ミスをして落ち込む後輩たちに「楽しんでやろう!」「次は頼むぞ!」と、とにかく明るく、積極的に声をかける。宇津野純一監督は「若林はチームの明るさの象徴。存在しているだけでチームが明るくなる。今のままやってくれればいい」と信頼を置く。
チームは今大会、8強超えを目標に掲げる。本番に向け、若林選手は「大事な場面で流れを変える1本を打ちたい」と意気込み、そしてこう続けた。
「安心してください。打ちますよ」【塚本紘平】
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