和歌山市立日進中1年の池田由芽さん(13)が3月、長野県で行われた「JOCジュニアオリンピックカップ全日本ジュニアスキー選手権大会」のアルペン競技スラローム(小学5、6年生の部)で優勝した。県内居住者が同大会を制するのは初の快挙という。温暖な和歌山から、どのようにして冬季競技の全国チャンピオンが生まれたのか――。
和歌山市で育った池田さんは雪になじみがなく、4歳の時、家族旅行で初めてスキーに挑戦。国体選手だった父和準(かずのり)さん(43)の影響で、小学1年生から本格的に競技を習い始めた。県内には高野山(高野町)に雪遊び用のスキー場が一つあるのみで、競技のできるゲレンデはない。
小学4年までは週末に兵庫県や滋賀県のスキー場に滑りに行く他、冬・春の長期休みになると北海道に行って指導を受ける日々。次第に本州在住の選手たちの中で上位の成績が残せるようになり、5年からは12月下旬~3月の冬季を夕張市で過ごす“スキー留学”を始めた。
3学期の間は夕張市の学校に通い、地元の子どもたちと一緒に授業を受ける。和歌山市と、両市の教育委員会の許可を得て、住民票を動かさずに一時転校できる「区域外就学」の制度を活用している。小学生最後の3学期は、母あいさん(40)が寮母となり、同じようにスキー留学の小中学生4人と生活をともにした。あいさんは「夕張のお友達に会えるのも楽しみにしていて、和歌山にいる時と変わらない様子なのが良い」と話す。
一時転校中は所属するチーム「夕張TSOジュニアレーシング」の練習を週4回こなしながら道内の大会に出て、めきめきと実力を伸ばした。和準さんは「勉強もきちんとしなければいけないので、学校に通わせてもらえるのはありがたい。家族で夕張に行くことを考えたこともあるが、スキー競技をさせるためにも仕事のある和歌山を離れるわけにはいかないんです」と打ち明ける。
夏は季節が逆になるニュージーランドで合宿をするが、和歌山にいるシーズンオフの生活はこれまでと変わらず、筋トレや走り込みといった「陸トレ」に励んでいる。自宅には和準さんが木の板2枚で手作りした、練習用のボードがあるという。40度ほどの傾斜で固定されたスキーブーツを履いて前傾姿勢を保つことで、実際にゲレンデを滑走する際の恐怖心を克服した。
全日本ジュニアスキー選手権大会で出場したスラロームは、急勾配をカーブしながら進む競技で、2本の合計タイムを競う。1本目は「守りに入ってしまった」として4位。2本目は緩やかな地点でもスピードを落とさず自己ベストをたたき出し、1位でフィニッシュした。池田さんは「優勝を狙いにいった。つま先をとにかくゴールの方向に向けて、滑り抜けた」と振り返る。
自他ともに認める負けず嫌いな性格で、スキー競技をしていて楽しい瞬間は「大会で勝てた時」と言い切る。4月には和歌山市役所に尾花正啓市長を表敬訪問した。尾花市長は「和歌山から冬のオリンピックに出てくれたら、本当にうれしい」とエールを送り、池田さんも「今度は世界大会で活躍したい」と笑顔を見せた。【安西李姫】
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