エディー・ジャパンが船出し、イングランド戦、マオリ・オールブラックスとの2戦とここまでの3試合続けてピッチに立っている斎藤直人=東京・秩父宮ラグビー場で2024年6月29日、長澤凜太郎撮影

 念願だった海外移籍のチャンスをつかんだ。ラグビー日本代表スクラムハーフ(SH)でリーグワンの東京SGを退団していた斎藤直人選手(26)が、フランス1部の強豪トゥールーズに移籍した。「ワールドクラスの選手になりたい」。エディー・ジャパンで超速ラグビーを体現する「9番」がさらなるレベルアップを目指して海を渡る。

 トゥールーズは、2023~24年シーズンのリーグ戦で23度目の頂点に立ち、欧州王者を決めるチャンピオンズカップも制覇した。まさに欧州屈指の強豪クラブである。チームには、斎藤選手と同じSHにフランス代表で世界的な名手のアントワーヌ・デュポン選手が所属する。厳しいポジション争いが予想されるが、斎藤選手は「積極的に1番手を狙うつもりで、どんどんアグレッシブにいく。たくさん学びたい」と貪欲だ。

 「海外でのプレーは学生時代からの目標だった」。かねて海外でのプレーを熱望していたが、昨秋のワールドカップ(W杯)フランス大会を経験してその思いは強まった。W杯では4試合に出場し、2試合に先発した。日本代表は2勝2敗で1次リーグ敗退。重圧がかかった試合で力を出し切れず、「より厳しい環境でプレーし続ける必要があると思った」と振り返る。

昨季までは東京SGでアタッキングラグビーを引っ張った斎藤直人=東京・秩父宮ラグビー場で2024年2月3日、長澤凜太郎撮影

求めたキックの精度

 課題として持ち帰ったのがキックの精度だった。ニュージーランドやオーストラリアは個人技を生かしたラグビーが主体だが、欧州のチームはキックを使って陣地をとっていく戦術が主流だ。近年はパスの名手が集まるSHでもキックの精度が高い選手が増えている。だからこそ、斎藤選手はキックを生かしたエリアマネジメントがより重視される欧州でのプレーを求めた。

 移籍についてエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)も「(斎藤選手は)世界有数の9番として申し分ない。日本は(ニュージーランドやオーストラリアなどの)南半球のラグビーの影響が強いが、(欧州のような)北半球のラグビーから学ぶことも多い。今後はそうした経験を他の選手に伝えてほしい」と期待する。

斎藤直人が加入するフランス1部トゥールーズの本拠地は、昨秋のワールドカップで日本代表の練習拠点にもなった=フランス・トゥールーズで2023年9月13日、角田直哉撮影

 トゥールーズとの契約は24~25年シーズンの1年間。契約に合意したのは6月末で、移籍市場が閉まるぎりぎりのタイミングだったという。「W杯を経験して、より(海外移籍への)気持ちが強くなった。(移籍の)話をもらってから(の交渉)が結構長くて。少しずつ進展はしていたがほっとしました」。時折声を弾ませながら率直な思いを明かした。

 斎藤選手は、ジョーンズHCの初陣となった6月22日のイングランド戦でも先発出場を果たした。ニュージーランドの先住民マオリ系で構成するマオリ・オールブラックスとの2試合にも出場し、うち1試合では初勝利。テンポの良さを生かして攻撃を加速させる役割として存在感を示し、エディー・ジャパンが掲げる「超速ラグビー」の実現を目指している。

 斎藤選手が次に見据えるのは、27年のW杯オーストラリア大会だ。「ワールドクラスの選手として出場したい」。13日に仙台市で行われるリポビタンDチャレンジカップのテストマッチ、ジョージア戦でも先発出場する。移籍が発表された後に迎える試合でのプレーに注目が集まる。【角田直哉】

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