長崎県内有数の進学校、県立長崎西高(長崎市)にたった一人のラグビー部員がいる。3年の山本央介(おうすけ)さん(17)。平日は自宅近くで坂道ダッシュや筋力トレーニングなどを一人でこなし、土日は長崎工や長崎北など有力校の練習に参加させてもらう。10月の国民スポーツ大会(旧国体)に向けた県選抜入り、そして合同チームでの全国高校ラグビーフットボール大会(花園)の出場を目指す。【尾形有菜】
小1の時、5歳上の兄と3歳上の姉がプレーしていた長崎ラグビースクール(同市)に入った。小2でバックスからFWに転向、タックルの面白さを体感し、のめり込んだ。中学では体力をつけるため陸上競技部に入り、平日は陸上、土日はスクールの練習に励んだ。
学業両立楽しむ
中1の時、兄が通っていた長崎西高の練習に参加させてもらった。ミスをしても「ドンマイ」と励まし合い、楽しそうにプレーしている姿が印象的だった。ラグビー強豪校からも誘われたが、「勉強もしながら、ラグビーもエンジョイしたい」と猛勉強して難関の長崎西高に進んだ。
入学時のラグビー部員は1年2人、2年4人、3年5人の計11人で、競技人数の15人に満たなかった。試合は合同チームでの出場だったが、高校からラグビーを始めた部員が半数を占める長崎西高で、山本さんは経験者として頼りにされ、自信をつけた。
減っていく部員
しかし、先輩が引退するたびに部員は減り、ポスターを作ったり体格の良い生徒に声をかけたりして勧誘に力を入れたが、新しい部員は入ってこなかった。1学年上の引退などで2023年6月以降は山本さん一人になった。
山本さんは来年、大学入試を控えるが、冬の花園を目指して部活を続ける。練習を終えてから帰宅後、毎晩机に向かう。
180センチ、95・5キロ。合同チームではFWのNO8を務めることが多い。「NO8が負けたらFWが負ける」と言われ、「重要なポジションで頼りにされている」と感じている。
単独チームへの憧れもあるが、「合同チームの方が得られるものが多い」。さまざまな学校の選手とチームを組み、多彩な指導者から教わった。「新しい戦術を学べ、単独チームでは出会えなかった仲間とプレーできた」と振り返る。
勧誘活動を継続
自身が卒業する来春までに入部者がいなければラグビー部は廃部になるため、勧誘活動を続けている。「西高のラグビーは『楽しむ』がベース。頭を使う競技なので、戦術がはまったりうまくいったりすると、難しい問題が解けた時のような達成感があって西高生に向いている」。
プレーも、学業も、そして部の存続も、最後まであきらめず、全力でぶつかるつもりだ。
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