「後悔のない夏にしてほしい」と話す早稲田大の安田投手=西東京市で

 6日に開幕した全国高校野球選手権東・西東京大会。野球に打ち込んできた球児たちの熱い夏が始まる。昨夏の西東京代表の日大三でエースだった早稲田大野球部1年の安田虎汰郎投手(19)は「昨年の夏が人生の大きな転換点になった。3年生たちは後悔のない夏にしてほしい」とエールを送る。(昆野夏子)  安田投手は千葉県鴨川市出身。幼いころから伊勢エビ漁師の祖父の船に乗り、足腰を鍛えてきた。小学2年で野球を始めたが、全国レベルの選手ではなかった。それでも日大三で当時監督だった小倉全由さんに憧れ、練習を見に来てくれた三木有造部長(現監督)に「絶対に日大三に行きたい」と直訴し、名門校への入学が決まった。  同学年には自分より実力のある選手がたくさんいた。それでも「自分で決めたことだから」と努力を重ね、伝統校でエースナンバー「1」を背負った。  苦しかった時期もある。3年生の5月、打撃不振で投手陣と野手陣が対立し、チームの雰囲気が悪くなった。「同じ方向を見なければ勝てないのに、ばらばらになってしまった」。率先して仲間と対話を重ねて思いをぶつけ合い、選手だけでミーティングを重ねるうちに、チームは一つになっていった。西東京大会ではその団結力を武器に勝ち上がった。  甲子園では、1回戦で完封勝ち。「自分の生命線で存在意義」と語るチェンジアップがさえ、その名が全国で知られるようになった。3回戦で敗れ、「甲子園だけが人生の目標でゴールだった」と号泣した。  だが甲子園での活躍は、人生を変えた。それまで進学先すら決まっていなかったが、早大から声がかかった。U-18ワールドカップ(W杯)の代表にも選ばれ、世界一に輝いた。今年の春は、六大学野球の春季リーグ戦で1年生ながらベンチ入りし、何度も好リリーフをして優勝に貢献した。

今年6月、六大学野球の早慶戦に登板=神宮球場で

 さらに、昨夏の活躍を見た全国の子どもたちから、ファンレターが届いた。六大学野球の試合にも足を運び、応援してくれるようになった少年もいる。「自分も子どものころ、高校野球やプロ野球を見て夢をもらった。だから今度は、自分が誰かに夢を与えられる存在になりたい」と語る。  必死の思いで夏の大会を戦い抜いた経験から「負けてもやってきた過程が大事。その過程を無駄なものにしないためには、日頃から死ぬ気でやらないと、中途半端で終わってしまう」と思う。  熱戦に臨む後輩たちに向けて「田舎の漁師町から出てきた自分は、3年生の夏に高校野球を通じて人生が変わった。自分の信念を大切にして、最大限がんばってほしい」と激励した。


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