「再び甲子園に行くために、しっかりやっていこう」。夏の高校野球愛知大会の開幕が迫った6月中旬、豊川高校(愛知県豊川市)の室内練習場で、野球部員たちに筋トレなどを指導するボディービルダーがいた。昨年7月から母校の野球部フィジカルコーチに就任した梅澤五郎さん(31)だ。豊川は今春のセンバツに出場。梅澤さんは「選手たちと一緒に甲子園に行く。それが今の一番の夢」と春夏連続出場を目指し、サポートに一層力を入れる。
梅澤さんは小中学校で野球に打ち込んだが、肘を故障し、豊川高ではテニス部へ。併せて週4~5日ジムに通って筋トレに励むようになった。一方で野球への情熱は消えず、野球部の試合はほとんど観戦したという。
県内の大学に入学するとウエートトレーニング部に入部。4年生でボディービルの大会に出場し、練習量に自信があったが、まさかの予選落ちに終わった。大会の厳しさを知り、トレーニング方法を見直した。どんなトレーニングをすればどの筋肉に効果的かなどを考えながら、自らを鍛え上げた。
大学卒業後は消防士となり、勤務の合間を縫って大会出場に向けた準備を進めた。前年に予選落ちした大会で優勝を果たすなど、国内外の大会で計7回優勝した。消防士の同僚からトレーニングについて意見を求められ、アドバイスすることが増えるうちに、人に体作りを教える楽しさに気づいた。「もっと教えたい」と昨年4月から同県豊橋市でジムの経営を始めた。
同7月、豊川野球部の長谷川裕記監督から「甲子園に行くために一つのピースになってほしい」とフィジカルコーチ就任を打診された。グラウンドを訪れると、熱心に練習に取り組む部員たちの姿があった。「自分が加われば、もっとチームは強くなれる」と依頼を快諾した。梅澤さんの指導もあり、選手たちはパワーアップ。昨秋の県大会準優勝、東海大会優勝を経て、今春にはセンバツ出場と快進撃を続けた。
現在は「選手に近い存在となり、雰囲気良く練習をすること」を心がけつつ、週2回指導している。試合ではスタンドで部員たちと一緒になって声を張り上げている。
長谷川監督は梅澤さんについて「選手たちの体つきが明らかに変わり、皆のモチベーションアップにつながっている」と大きな信頼を寄せている。
梅澤さんは「自分がやってきたことを教えられ、本当に幸せ。これからも選手たちと一緒に戦いたい」と話す。【塚本紘平】
うめざわ・ごろう
愛知県出身。豊橋市内でパーソナルトレーニングジム「ラリーゴ」を経営しながら、豊川高野球部でコーチを務める。黒にんにくの成分が入った人工甘味料不使用のプロテインを開発・販売し、野球部員も愛飲している。自身の筋肉で一番自信のある部位は胸筋。
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