宇野昌磨さん(26)が競技生活から引退した。2018年平昌冬季オリンピックで銀メダル、22年北京冬季五輪では銅メダルを獲得。世界選手権で連覇するなど輝かしい成績を残し、羽生結弦さんと男子フィギュアスケート界をリードしてきた。
インドア派でゲーム好きを公言し、マイペースな雰囲気も宇野さんの魅力だ。思い出すのは初出場の平昌五輪。銀メダルを獲得した翌朝、少し眠たそうな表情で記者会見場に現れた。写真撮影の前に、宇野さんの様子を見た羽生さんがメダルのリボンを直すシーンがあった。お互いライバルでありながら、時には兄弟のようにも見えるほほ笑ましい場面が、とても印象に残っている。
リンクの上では表情が一変し、フォトグラファーにとってはまさに「絵になる」選手だ。体を大きく反らして横滑りする代名詞の「クリムキンイーグル」や、北京五輪のショートプログラム(SP)で見せた顔を手で覆うような仕草など、印象に残る場面はたくさんあった。
その瞬間を切り取ると宇野さんの表情と合わさり、時に美しく、時にエモーショナルな一枚となる。どの場面をどう切り取るか。フォトポジションに悩み、絶対に撮り逃すまいとシャッターを押した日々が懐かしい。
記者会見では引退を決めた理由の一つに、先に競技から離れた羽生さんや、米国のネーサン・チェンさんの名を挙げた。「ずっと共に戦ってきた仲間たちの引退というのを聞いて、すごく寂しい気持ちと、取り残されてしまったという気持ちがありました」
ソチ五輪後の平昌、北京と続いた長い道のりは、自分がフィギュアスケートを担当した時期とも重なる。宇野さんの引退で、フィギュアスケートの一時代が終わったように感じた。
今回、一枚を選ぶのに難儀した。本来、いい写真は出稿済みだが、改めて平昌、北京五輪の撮影データを見直してみた。選んだ一枚は平昌五輪のフリーの場面。後ろ姿だから、出稿しなかったのだろうか。伸ばした指先や体のバランス、そしてスケーティングが美しい。
フィギュアスケート選手は、競技を終えてもアイスショーなどを通して、引き続き演技を見ることができる。宇野さんは、今後どのようなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。同時に次世代の「絵になる」選手の活躍にも期待したい。【手塚耕一郎】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。