大学を終えて競技からの引退を考えていたが、胸の内を告げると、新たな実業団陸上部の誕生につながった。昨季の日本選手権男子110メートル障害で6位入賞を果たした宮崎匠選手(23)は、通信会社「QTnet」(福岡市)が発足した陸上部の所属選手第1号として、社会人のスタートを切った。
5月に北九州市の黒崎播磨陸上競技場inHONJOで開かれた第67回九州実業団陸上競技選手権(毎日新聞社など主催)に出場した。18日の110メートル障害では決勝の直前に右ふくらはぎがつるアクシデントがあり、13秒79(追い風参考)で2位。「勝ちきれなかったのは悔しい」と語ると、19日の男子100メートルでも10秒57で2位に終わった。
福岡市出身。小学校はソフトボールをしていたが、中学校から陸上を始めた。「100メートルで勝てない相手がいたから」と中学2年からはハードルにも取り組んだ。東福岡高3年では、全国高校総体(インターハイ)の400メートル障害で5位、1600メートルリレーでは6位入賞に貢献した。
競技継続の思いが強くなったのは、中央大4年時だ。110メートル障害で自己ベストの13秒63をマーク。世界ユニバーシティー夏季大会の日本代表にも選出されたからだ。「それまでは陸上をやめる気満々だったが、陸上を続けたい選択も出て葛藤が起きた」と語る。
QTnetの採用面接で思いを告げると、担当した川波貴臣さん(50)が、陸上部の発足を決意。福岡・大牟田高3年で全国高校駅伝優勝を果たし、中大4年では箱根駅伝の8区で区間新記録をマークし総合優勝にも貢献した川波さんが、自ら監督に就任した。
「長距離チームが九州には多い中で、短距離の陸上部を作ってくれた。九州から全国にQTnetを広げていきたい」と感謝する宮崎選手は東京支店に勤務。フレックスタイム制などを活用しながら、母校の中大で練習に励む。スタートからのスピードには自信があるが、課題は後半のスタミナ。ハードルの台数を増やして跳ぶなどして体力面の強化を図っている。
宮崎選手は「僕の活躍次第で、後輩たちも競技を続けたいとなればうれしい」と話す。27日からの新潟・デンカビッグスワンスタジアムでの日本選手権にも出場予定で「決勝は観客全体が盛り上げてくれる。またあの舞台に立ちたい」と意気込む。日本選手権での表彰台と、2025年に東京で開かれる世界選手権での日本代表を目標にした社会人1年目の戦いが始まっている。【藤田健志】
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