あおむけの状態でバーベルを上げるパラパワーリフティング。
足の力がなかなか使えないため上半身だけでバーベルを上げているような感覚です。世界トップでは200kg以上を上げるこの競技、シンプルですが選手たちの肉体のすごさを感じることができます。
そんなパラパワーリフティング日本代表がパリの切符をかけた最後の国際大会に臨むため練習を公開、その半日に密着しました。
10時の練習開始に合わせて現れた選手たち。ストレッチ後早速選手たちはバーベルを持っていきます。
20kgのバーのみ、重りがない状態から徐々に負荷を増やしていき、目標の重さになるまでしっかりアップを積んでいきます。
2大会連続のパラリンピックを目指す59kg級の光瀬智洋選手はメインの練習に取りかかると掛け声で気合を入れます。
この日は147kgを3回持ち上げる練習を3セット行いました。
1セット目はきれいに持ち上げることができるも2セット目、3セット目では最後の持ち上げが粘りながらとなりました。
それでも147kgを2回持ち上げることが初だったため練習での自己ベストを更新。吉田ハイパフォーマンスディレクターによると、
「回数を増やすことは重さの目安だと5キロ程度伸びている証でもある」と太鼓判を押されていました。
障がいを負う前から俳優になることが夢だった光瀬選手。
日本パラパワーリフティング界初となるパラリンピックでのメダルを獲得し、知名度を上げ俳優としての夢をかなえることが目標です。
一方、72kg級の樋口健太郎選手はこの日全選手の中で一番重いバーベルを上げました。
その重さは180kg!用意されてた重りをほとんど使い切ります。
フォームの確認をメインとしていたためしっかりあげきる練習を3セット行いました。試合さながらのコールを受けながらのラスト1セットでは、ほかの選手たちもひときわ大きく「押せ!!」と鼓舞していました。
12時になると午前の練習はいったん終了に。
昼食は一般の方も食べることのできる場所ですが、選手たちには専用の食事が用意。この日は生姜焼きをメインとしてかぼちゃサラダやゼリーが献立でした。
13時からは午後練習ですが午前中にメインのトレーニングを行った選手が多かったため、各自体のケアや栄養士さんの聞き取り調査、身体の数値の測定を行っていました。
そんな中、一人の女性選手がトレーニング場に姿を現します。田中秩加香(ちかこ)選手です。
実は秩加香選手の旦那さんはブラインドサッカー日本代表として東京パラリンピックに出場し、現在も守備の要として活躍している田中章仁(あきひと)選手。パリパラリンピック出場を夫婦二人が異なる競技で目指しています。
この日は軽めの調整だった秩加香選手ですが、競技歴はまだ2年ほど。下肢の機能障がいに加え、視覚障がいを抱える二重障がい者として、中学3年生から27歳までは陸上を行ってきました。
27歳の時に練習中のアクシデントや結婚の転機もあり引退。以降はパラアスリートの妻として家庭を支えてきました。
しかし22年の年明け、コロナもありジムに通い始めたところトレーナーからベンチプレスの才能を見出され同年5月の大会がデビュー戦となりました。
いきなり60kgを持ち上げ、さらに翌23年1月には日本女子が前人未到だった80kgの大台にも到達。昨年12月に行われた日本選手権では95kgとさらに日本記録を更新し3桁の重さも視野に入るようになってきました。
まさに日本最強の“主婦”です。
そして、この日は秩加香選手のために強力なサポートが見えていました。
それは支援学校の時高校1年生から3年生の時に担任だった大陽(たいよう)久美子さんです。高校卒業から現在まで交流し、日本選手権も応援に駆けつけてくれていました。
大陽さんと話してる時には笑顔があふれてる姿が印象的で、「パリが決まったらパリに来てほしいです」とにやり。まさに二人の信頼関係が垣間見える瞬間でした。
100kg超えの試技を見せパリの切符をつかむために、今月末のW杯に挑みます。
〈パリパラリンピック代表決定まで〉
6/20〜26 ワールドカップ@ジョージア
7/6 第1弾選手発表・パリランキング8位が各国内定
7/13 第2弾選手発表・各級上位に複数人いる国は枠を放棄後繰り上げられた選手+世界連盟推薦選手が内定
※この映像にはナレーションはありません。ご了承ください。
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