若手が新時代を築きつつある幕内の舞台に、29歳の関脇経験者が戻ってくる。大相撲夏場所で、十両優勝を果たした若隆景。名古屋場所(7月14日初日・ドルフィンズアリーナ、中日新聞社共催)では再入幕が確実で、「楽しみ。自分らしい相撲を取れるように頑張りたい」と誓った。

◆けがなく15日間、優勝に「ホッとした」

 5月26日の夏場所千秋楽。若隆景は単独トップの13勝1敗で迎えた。対馬洋との一番。立ち合いで左にずれて当たりをかわし、相手の向き直る瞬間を逃さず押し出した。けがなく15日間を終えて優勝を手にし「ホッとした。しっかり集中力を切らさず、相撲が取れた」とわずかに表情を緩めた。

対馬洋(左)を攻める若隆景=大相撲夏場所千秋楽、両国国技館で

 2年前の春場所に賜杯を抱いた実力者。その1年後、事態は暗転した。東関脇だった昨年春場所の取組中に右膝に大けがを負った。続く夏場所から3場所連続で全休し、番付は幕下まで落ちた。厳しいリハビリを経て昨年九州場所から復帰。右膝には今もテーピングが巻かれている。  元来は尻上がりに力を発揮するスロースターター。ただ、けが明けは違った。十両復帰場所となった今年3月の春場所では、10日目からの6日間で1勝5敗と失速した。1年ぶりの15日間の土俵に体が持たなかった。

◆稽古に手応え 崩れた先場所バネに「最後まで集中」

 そこからの修正能力は角界随一。夏場所前は体力強化に注力した。稽古量を増やし、「先場所前よりも十分に稽古を積んできた」と手応えを得て場所に入った。下からの圧力と横の動きの鋭さが戻りつつあり、精神面の戦いになる終盤戦では「先場所は後半崩れたので、最後まで集中しようと思っていた」と4日目から無敗で駆け抜けた。心身ともに成長したことを示し、幕内復帰を確実にした。

若隆景(中)が上手出し投げで千代翔馬を破る=大相撲夏場所12日目、両国国技館で

 土俵に上がるたび、館内から連日大きな拍手を送られた。角界の人気力士は「歓声を聞くと頑張ろうと思える」と背中を押されている。  夏場所で史上最速優勝を遂げた大の里が、話題の中心になる名古屋。若隆景にとっては、祖父の元小結若葉山が飲食店を開業し、そこで働いていた父政志さんらと一家で幼少期を過ごしたゆかりの地でもある。「体も少しずつ良くなっている。もっともっと稽古して、下からの相撲を取り切りたい」。土俵の主役になるため、復活の道を着実に歩んでいる。(丸山耀平) 

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