昨年のネーションズリーグで銅メダルを獲得したバレーボール男子日本代表の選手たち。今年は前回を上回る決勝進出を目指す=東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで2024年5月7日午後2時55分、玉井滉大撮影

 21日にトルコのアンタルヤとリオデジャネイロで男子大会が始まったバレーボールのネーションズリーグは6月4~16日、北九州市で男女福岡大会が行われる。大会運営で意識しているポイントの一つはSDGs(持続可能な開発目標)だ。

 県、市とともに大会運営を担当する「バレーボールワールド(VW)」日本エリア代表の青山アリアさん(42)は「スポーツ大会の開催意義が問われる中だからこそ、バレーの大会は人のため、社会のために行う」と意気込む。

 VWは、国際バレーボール連盟(FIVB)が2021年、財源を確保して競技の普及を図るため、マーケティング部門を独立させて設立した。国内では昨年から国際大会のスポンサー集めの活動を始め、今年から国内のネーションズリーグなどの大会運営も行うようになった。

 新型コロナウイルスの感染拡大がやまない中で開催された東京オリンピックは、大会の意義が揺らぎ、開催可否を巡って賛否が二分した。

 ネーションズリーグ福岡大会に向け、青山さんは「概念的なものだけでなく、具体的な策を打ち出し、アフターフォローまでしていきたい」と話す。

バレーボールワールド日本エリア代表としてネーションズリーグ福岡大会の運営を行う青山アリアさん=東京都内で2024年5月16日、小林悠太撮影

 大規模大会で必ず課題に挙がるのが、フードロスの問題だ。

 通常、2週間の大会で約2万食分の弁当が必要になり、最低でも4分の1程度を廃棄するという。今大会は、スタッフやボランティアらへの弁当の提供を行わず、近隣の約70店舗で使える「ミールクーポン(食事券)」を配ることで廃棄をゼロにする。青山さんは「(食事のために)歩くことが健康増進になり、自然と地域とのつながりも生まれる」と狙いを説明する。

 選手への食事は、いつでも必要な栄養を取れるようにビュッフェ形式で提供するため、一定のフードロスは避けられない。そこで、消費量を毎日調べ、ロスが極力減るように工夫する。得られたデータは他の大会運営にも活用するという。

 また、バレーの応援でおなじみのスティックバルーンは、試合後、体育館周辺などで捨てられる可能性がある。そこで、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えながらリサイクルできる業者に処理を依頼し、大会側で処分まで責任を負う。会場内では「不要なスティックバルーンは席にそのまま置いておいてください」などと呼びかける。

 CO2の排出量を抑えるため、選手らが移動時に乗るシャトルバスの台数も減らす。

 宿泊施設から会場が近いため、一部の選手らは徒歩での移動も検討しているという。青山さんは「選手のセキュリティーが第一のため、バスを使うことも出てくる」とした上で、「街の人たちも選手たちを間近で見ることができれば、選手の大きさやすごさを実感できる」と期待する。

 選手と触れあう仕掛けは他にもある。試合会場と隣の練習場をつなぐ通路は「ファンゾーン」と名付けられ、チケットを持っていない人も選手を見られる構造になっている。

ネーションズリーグ・トルコ大会で設置された「ファンゾーン」。選手たちとファンが触れあえる場になっている=トルコで2024年5月(バレーボールワールド提供)

 以前、バレーの国際大会は「ワールドカップ永年日本開催」が打ち出されるなど日本開催が多かった。しかし最近は、世界中でバレーの人気が伸びており、開催権を獲得することが難しくなっている。青山さんは「今大会で日本開催の良い面をアピールしていきたい」と言葉に力を込める。

 ネーションズリーグは男女それぞれ世界のトップ16カ国・地域が参加する大会で、1次リーグの一部が北九州市で行われる。福岡大会は、男子が6月4~9日、女子が11~16日で、日本を含めた男女各8チームが4試合ずつを戦う。

 日本戦のチケットは男子が売り切れたが、女子は販売中。地元の中高生が世界トップレベルのプレーを目の当たりにできるよう価格設定に配慮した。高校生まで「子供料金」とし、日本戦以外は500円、日本戦は1000円から観戦できる。【小林悠太】

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