AIを使って野球肘を早期発見するプログラムの開発に携わった高辻謙太さん=京都市上京区の京都府立医大で2024年5月14日、大東祐紀撮影

 野球でボールを投げ過ぎて肘を痛める「野球肘」について、AI(人工知能)を用いて早期発見するプログラムを京都府立医大と兵庫県立大が共同開発した。多数の球児らの肘のエコー画像と照合して自動的に異常を見つけ出す。医師によってばらつきがあった診断の正確性を高めた。

 野球肘は、靱帯(じんたい)が引っぱられて骨の一部がはがれたり、骨同士がぶつかり傷付いたりする。骨が軟らかい成長期に多く見られる。初期では痛みなどの自覚症状のないケースがあり、進行すると手術が必要になる。

 現在は、医師がエコー検査の画像などを基に診断する。エコーを照射する器具を数ミリ単位で操作して肘の適切な部位に当てることが必要で、画像判定には専門的なスキルも求められる。

野球肘が起こる仕組み

 新たなプログラムは、京都府立医大大学院の運動器機能再生外科学(高橋謙治教授)の研究グループと、兵庫県立大先端医療工学研究所(小橋昌司所長)が2020年から共同で研究・開発してきた。肘の外側の骨同士がぶつかり軟骨が傷付く「離断性骨軟骨炎(OCD)」と呼ばれる野球肘の症状を早期発見する。

約200人のエコー画像と照合

 エコーを肘に照射して、OCDを発症しやすい「上腕骨小頭(しょうとう)」と呼ばれる肘の外側の骨の先端部を特定して画像化。プログラムにあらかじめ読み込ませた球児ら196人(正常104人、野球肘92人)分の肘のエコー画像と照合して、OCDかどうかを二者択一で自動判定する。97%の精度で症状を検出できたという。実用化に向け、企業に協力を求めていく。

 研究グループメンバーで京都府立医大大学院の高辻謙太さん(36)は「現在、エコー検査は普及が十分ではなく、見逃される可能性もある。実用化されれば、誰でも発見できるようになり、苦しむ子どもたちが少なくなる」と話す。自身も元球児として野球肘に苦しんだ同大学院講師の木田圭重(よしかず)さん(46)は「将来的には血圧を測るように、OCDを自分でチェックできる未来も期待できる」と強調する。【大東祐紀】

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