5位に入った土井陵輔の平行棒=群馬・高崎アリーナで2024年4月14日、玉城達郎撮影

全日本体操個人総合選手権 男子決勝(14日、群馬・高崎アリーナ)

土井陵輔選手(セントラルスポーツ)=169・797点、5位

 万全の状態ではない中でも、パリ・オリンピックの代表枠争いに踏みとどまった。土井陵輔選手は上位と小差の5位と耐え、5月のNHK杯へ、逆転での五輪出場権獲得に望みをつないだ。

 1種目め、得意なはずの床運動でラインオーバーをして14・200点と得点を伸ばせず「自分の中では痛いミスだった」。その後は我慢の演技を続けたが、最終種目の鉄棒でも落下し「大きなミスなく乗り切ろうと思ったが、最後の最後に出てしまった」と悔しそうに振り返った。それでも3月に痛めた右足首の影響が残る中で「まずまず自分の実力は出せた」と一定の手応えはあり、「自分の技自体はおかしくない。もう一回体の使い方を考えて練習したい」と前を向いた。

 日体大から今春、セントラルスポーツに入社。「同期」は東京五輪金メダリストの橋本大輝選手だ。「王者」がすぐ隣にいる環境は、どのようにプラスに作用しているのか。土井選手は間髪入れず言葉を続けた。

 「やっぱりオリンピックチャンピオンなので、何が良くて、何がだめかも目の前で示してくれる。単純に大輝を倒せば、五輪王者(になれる)っていう考えで演技できる。そういった面でもいい部分しかないです」

 土井選手がさらに「うれしいこと」と強調するのが、一方的に吸収しているわけではなく、互いに学び合い、高め合うような関係性を築けていることだ。「僕が得意の床を練習している時に、見ていた大輝が『なるほどね、スキルが上がったぜ』と言い出して。どうやら僕の演技で参考になる部分があったみたいで、言葉でやりとりしなくても切磋琢磨(せっさたくま)というか、新たな発見をできていることは本当に幸せ」と充実感をにじませる。

 一方で橋本選手は倒すべき相手でもある。試技会ではなかなか勝てず、橋本選手から「練習で勝てないようじゃダメだな」と発破をかけられることもあるという。「すごく悔しい。同期だからこそより悔しいです」。だから、目標を聞かれると「橋本大輝に勝つこと」と端的に答える。パリ五輪、そして頂点からの景色は、最も身近なライバルを倒した先に待つ。【角田直哉】

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